精神障害者の雇用は前年比11.8%増、障害種別で最大の伸び率
厚生労働省が公表した「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(令和7年12月19日公表、令和7年6月1日時点のデータ)によると、民間企業に雇用されている障害のある人の数は70万4,610.0人で、22年連続で過去最高を更新しました。実雇用率は2.41%で、14年連続の過去最高です。
障害種別に見ると、身体障害者は37万3,914.5人(対前年比1.3%増)、知的障害者は16万2,153.5人(同2.8%増)でした。これに対して精神障害者は16万8,542.0人(同11.8%増)と、他の2区分を大きく上回る伸び率になっています。精神障害者保健福祉手帳は、発達障害を含む精神・行動障害のある人が交付の対象です。発達障害のある人の多くは、この手帳を取得したうえで雇用されており、今回の伸び率の高さには、発達障害のある人材の採用が広がっている実態が表れていると考えられます。
一方で、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%にとどまります。障害者を1人も雇用していない企業は3万7,262社にのぼり、法定雇用率に届かない企業のうち57.3%を占めています。採用の入り口では、企業間の差がなお大きく残っています。
「雇う」から「活かす」へ、問われる企業の視点
2026年7月には、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。雇用義務の対象となる事業主の範囲も広がっており、採用数を確保すること自体が、これまで以上に企業の課題になっています。
採用できても、定着や活躍につながらなければ、本人にとっても企業にとっても望ましい結果とはいえません。発達障害の特性がある人材は、業務内容や職場環境が合えば高い専門性や集中力を発揮します。その一方で、指示の受け取り方やコミュニケーションの取り方で行き違いが生じやすい面もあります。この行き違いを本人の努力だけに委ねず、職場の仕組みとして解消していく視点が求められています。
発達障害特性のある人材が力を発揮する5つの実践ステップ
採用した人材が力を発揮し、長く働き続けられる職場をつくるために、人事担当者と受け入れ部署が取り組める5つのステップを紹介します。
ステップ1 特性を「行動」で捉え、決めつけを外す
「発達障害」とひとくくりにせず、本人が実際にどの場面で困りごとを感じ、どの場面で力を発揮しているかを、具体的な行動として観察することから始めます。診断名やイメージだけで対応方法を決めると、本人の強みを見落とすおそれがあります。
実施チェック:配属前後の面談で、得意な作業と苦手な作業を本人の言葉で聞き取り、記録に残しているか。
ステップ2 業務をタスク単位に分解し、強みが活きる配置に組み直す
職務全体を漠然と任せるのではなく、業務をタスク単位に分解し、優先順位や手順を明確にします。同時並行の作業が苦手な人には工程を一つずつ区切って渡し、反復作業への集中力が高い人には定型業務をまとめて任せるなど、特性に応じた配置に組み直します。
実施チェック:担当業務を書き出し、同時に扱うタスクの数と作業手順が、本人にとって処理しやすい単位になっているかを配属先の上司と確認しているか。
ステップ3 指示とフィードバックを具体的・視覚的に整える
「早めに」「適宜」といった曖昧な言葉を避け、期限や分量を数値で示します。口頭の指示だけでなく、手順書やチェックリスト、図解など、視覚的に確認できる形で情報を残すことも有効です。評価を伝える際も、良かった点と改善点を分けて具体的に示します。
実施チェック:指示や評価の言葉から曖昧な表現を洗い出し、期限・分量・手順を数値と文書で示す形に置き換えているか。
ステップ4 本人と職場、両方向けの相談窓口を用意する
本人が困りごとを一人で抱え込まないよう、直属の上司以外にも、人事や産業保健スタッフなど相談できる窓口を用意します。あわせて、配属先の上司や同僚が対応に迷ったときに相談できる窓口も別に設けます。ハローワークの発達障害者雇用トータルサポーターや地域障害者職業センターなど、外部の専門機関と連携できる体制を、あらかじめ確認しておくことも欠かせません。
実施チェック:本人用と職場用、それぞれの相談窓口の担当者と連絡方法を明文化し、配属時に本人と受け入れ部署の双方へ共有しているか。
ステップ5 管理職・同僚への理解を広げ、働き方の選択肢にする
特定の社員だけへの配慮に見えると、職場内に不公平感が生まれかねません。指示を具体的にする、業務をタスク単位に分解するといった対応は、発達障害の有無にかかわらず、多くの社員にとって働きやすさにつながる工夫です。管理職向けの研修や社内周知を通じて、合理的配慮を特別な対応としてではなく、職場全体で選べる働き方の一つとして位置づけます。
実施チェック:管理職向けの研修や説明会を年1回以上実施し、合理的配慮の考え方と具体例を共有しているか。
まとめ:採用の先にある「活躍」を仕組みにする
精神障害者の雇用が前年比11.8%増という数字は、発達障害のある人材の採用が着実に進んでいることを示しています。これからの課題は、採用した人材が実際に力を発揮し、長く働き続けられる職場をつくることです。
特性を行動で捉え、業務とコミュニケーションの仕組みを整え、職場全体の理解を広げる。5つのステップを自社の状況に合わせて一つずつ実行していくことが、人材の定着と組織の力の底上げにつながります。
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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