待遇差の説明を求めた社員は15.1%にとどまる
パートタイム・有期雇用労働法は、令和2年4月に施行されました(中小企業は令和3年4月)。施行後に正社員との待遇差について「説明を求めたことがある」と答えたパート・有期社員は15.1%です。説明を求めた社員のうち「説明があり納得した」割合は79.7%でした。出典は、厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」の報道発表資料(令和4年11月25日公表)です。
説明を受けてもなお納得していない社員は、2割ほど残っている計算になります。同じ調査では、自分と業務内容・責任の程度が同じ正社員がいるパート・有期社員のうち、45.0%が「賃金水準は低く、納得していない」と回答しています。待遇の説明を求める仕組みは、十分に使われていません。使われた場合でも、納得には至っていない実態がうかがえます。
こうした状況を受けて、2026年10月には同一労働同一賃金ガイドラインをはじめとする関連制度が改正されます。施行までの期間に、企業がどこまで準備を進められるかが問われています。
2026年10月に何が変わるのか
厚生労働省は、今回の改正を3つのポイントに整理しています。出典は、厚生労働省Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」(2026年8月3日公開)です。
労働条件明示事項の追加
パート・有期社員を雇い入れる際(契約更新時を含む)には、書面での明示事項が一つ増えます。これまでの「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4項目に加え、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨を明示することが義務付けられます。
同一労働同一賃金ガイドラインの改正
どのような待遇差が不合理にあたるかを示すガイドラインが見直されます。家族手当は、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期社員に、正社員と同一の手当を支給する必要があるとされました。住宅手当は、正社員と同一の転居を伴う配置転換があるパート・有期社員に、同一の手当を支給する必要があるとされました。夏季冬季休暇は、パート・有期社員に正社員と同一の日数を付与する必要があるとされました。
雇用管理上の措置内容の変更
待遇差を説明する方法も具体化されます。「資料を活用した口頭での説明」、または「説明すべき事項を全て記載した資料の交付」のいずれかによることが必要になります。賃金の決定では、職務内容や成果、意欲、能力、経験などの要素を公正に評価し、昇給に反映することが求められます。正社員転換制度の内容や転換実績についても、パート・有期社員への明示と、ウェブサイトでの定期的な公表が望ましいとされました。
改正に備える5つの実践ステップ
施行日までに、人事担当者は次の5つのステップで準備を進めます。
ステップ1 雇い入れ時の書面明示事項を見直す
労働条件通知書のひな型に、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の項目を追加します。既存のひな型を使い続けると、明示義務違反にあたるおそれがあります。
実施チェック:労働条件通知書のひな型を更新したか。人事システムやテンプレート管理ツールに反映したか。
ステップ2 家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の支給要件を点検する
自社の手当規程を確認し、パート・有期社員が対象から外れている手当がないかを洗い出します。継続勤務が見込まれる従業員への家族手当、転居を伴う配置転換がある従業員への住宅手当、夏季冬季休暇の日数は、特に確認が必要です。
実施チェック:就業規則・賃金規程の該当条文を洗い出したか。対象外になっている手当・休暇の有無を確認したか。
ステップ3 待遇差の説明方法を整備する
口頭説明用の資料、または交付用の説明資料を、あらかじめ準備します。説明を求められてから作成すると、対応が後手に回ります。
実施チェック:説明用資料のひな型を用意したか。説明を担当する窓口と担当者を決めたか。
ステップ4 賃金決定の評価基準を明文化する
職務内容、成果、意欲、能力、経験のどの要素をどう評価し、昇給に反映するのかを、規程や評価シートに明文化します。評価基準があいまいなままでは、待遇差の合理性を説明できません。
実施チェック:評価要素と昇給への反映方法を文書化したか。評価者間で基準の認識をそろえたか。
ステップ5 正社員転換制度の実績を可視化する
転換制度の利用条件と、過去の転換実績を整理します。パート・有期社員への周知資料と、ウェブサイト掲載用の資料を用意します。
実施チェック:転換実績の件数・条件を集計したか。周知資料とウェブサイト掲載の担当・時期を決めたか。
制度対応を人材定着の機会に変える
今回の改正は、書面の様式や説明の手順を整える作業に見えるかもしれません。しかし、待遇差について説明を求めた社員の79.7%が納得したという結果は、丁寧な説明そのものが納得感を高めることを示しています。5つのステップを順に進め、法改正への対応を、パート・有期社員が納得して働き続けられる職場づくりの機会につなげてください。
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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