育児休業から復帰した女性のうち43.6%が、当初思い描いていたキャリアプランよりも働き方をセーブすることになった、またはそうなりそうだと感じています。内閣府男女共同参画局が2025年8月に公表した調査によります。調査名は「令和6年度 仕事と生活の調和推進のための調査研究~キャリア形成と育児等の両立を阻害する要因に関する調査~」です。2025年1月17日から21日に実施され、有効回答2,853名のうち、育休から正社員として復帰した2,786名を対象としています。同じ質問に対して男性は47.6%が「ほぼ計画どおり」と回答しており、受け止め方に大きな差が出ています。
出産・育児を経た社員が、本人の希望とは関係なく補助的な業務や責任の軽い仕事にとどめ置かれ、昇進・昇格の機会から遠ざかる状態は「マミートラック」と呼ばれます。育児休業や時短勤務の制度は、すでに多くの企業で整っています。それでも復帰後にキャリアが停滞するのは、制度の有無よりも、復帰後の役割の与え方と職場の関わり方に理由があるためです。本記事では、内閣府の調査結果をもとに何が起きているのかを整理したうえで、キャリアの停滞を防ぐ三つの設計を紹介します。
育休復帰後に何が起きているのか
同調査で、キャリアプランを当初より下方修正することになった女性に具体的な内容を尋ねたところ、25.8%が「責任の少ない仕事や職種への配置転換を希望した」と回答しました。次いで25.3%が「管理職を目指すことをやめた」と回答しています。自ら望んで業務量を抑えた人がいる一方で、任される仕事の内容が変わったことをきっかけに目標を引き下げた人も少なくありません。
育児をしながら働くことが人事評価にどう影響するかという設問では、女性の29.2%が「ネガティブな影響があると思う」と回答し、男性は29.2%が「ポジティブな影響があると思う」と回答しました。同じ29.2%という数字が、男女で正反対の受け止め方に分かれています。ネガティブな影響があると考える理由は、「責任のある業務を任せてもらえないため、評価されにくく、キャリアアップが図りにくいと考えるから」が45.4%で最も多くなっています。
内閣府男女共同参画局は、広報誌「共同参画」2025年11月号で調査結果を次のようにまとめています。
女性は、育児休業取得前に、難易度の高い業務を経験している者の割合が男性と比べ低いことから、女性についても、若いうちから、難易度の高い仕事を経験する機会を増やしていくことが重要です。
同調査では、育休取得前に組織横断的なプロジェクトや新規事業の立ち上げなど難易度の高い業務を経験していた人ほど、復帰後の仕事に対するモチベーションが高く、業務の難易度が下がったと感じる割合も低い傾向が確認されました。ところが、育休前にこうした業務を経験していた女性は「当てはまるものはない」と回答した人が約7割にのぼり、男性より経験の機会が少ない実態も明らかになっています。復帰後の役割づくりは、育休に入る前の業務経験の与え方から始まっているといえます。
キャリアの停滞を防ぐ三つの設計
同調査では、キャリアプランどおりに両立できている人に理由を尋ねると「職場全体に仕事と育児とを両立する人を支える雰囲気があるため」が42.4%で最も多く挙がりました。また、プランを変えずに両立するために必要だったサポートを尋ねると、「柔軟な勤務制度とその利用しやすさ」「上司の姿勢」「職場全体の雰囲気」の三つが上位を占めました。この結果は、復帰後の設計を三つの視点で見直す必要性を示しています。
設計1.業務を一律に減らすのではなく、本人の意向から組み立てる
復帰後の業務量を会社側の判断だけで一律に軽くすると、本人が望んでいなくても「責任のある仕事を任せてもらえない」という受け止めにつながります。本人が望む難易度と、実際に任される業務の難易度を、復帰前の面談ですり合わせることが出発点になります。
- 実施チェック:復帰の1か月前までに、本人の意向(業務量・難易度・将来のキャリア希望)を確認する面談を設定したか
- 実施チェック:復帰後3か月・6か月の時点で、業務内容が本人の希望と合っているかを再確認する場を設けたか
設計2.上司との対話でキャリア意向を継続的に確認する
調査では、上司が子どもを持つ社員のキャリアアップを応援する姿勢を示すことが、両立の継続を左右する要因として繰り返し挙がりました。復帰時の面談だけで終わらせず、定期的な1on1のなかでキャリアの希望を聞き取る仕組みにすることが重要です。
- 実施チェック:復帰後の1on1に、業務の進捗だけでなくキャリア希望を確認する項目を組み込んだか
- 実施チェック:管理職向けに、両立支援制度と評価制度の関係について説明する機会を設けたか
設計3.欠勤や早退をチームでカバーし合う体制を先につくる
子どもの体調不良による急な休みは避けられません。個人の頑張りやフォローに頼る体制のままでは、休むたびに引け目を感じさせ、本人が自発的に業務を抑える方向に働きます。誰か一人が欠けても業務が止まらない体制を、復帰を待たずに整えておくことが必要です。
- 実施チェック:業務が特定の個人に属人化していないか、復帰前に棚卸ししたか
- 実施チェック:急な欠勤・早退時の引き継ぎ手順を、チーム全員が共有しているか
まとめ
育児休業からの復帰後にキャリアをセーブすることになった女性は43.6%にのぼります。背景には本人の希望に加えて、業務の任され方や評価の受け止め方の男女差があります。制度を整えるだけでなく、復帰後の役割設計・上司との対話・チームの支え合う体制という三つの視点で見直すことが、キャリアの停滞を防ぐ具体的な一歩になります。
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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