欠員が発生しても、77%は補充されない
株式会社パーソル総合研究所が2024年11月27日に発表した「オフボーディング(欠員発生時の組織的取組)に関する定量調査」によると、退職や育児休業・介護休業などの中長期休(3か月以上)によって欠員が生じた場合、その77.0%で補充がなされていないことが明らかになりました。内訳は、「なかった、しなかった」が47.4%、「募集しているが、できていない」が29.6%です。本調査は、全国の正社員20~59歳を対象にしたスクリーニング調査(有効回答37,244人)を経て、前任者・後任者・上司それぞれの立場から1,350人前後を対象に、2024年2月16日~20日に実施されたものです。
採用の入口に注目が集まる一方で、抜けた穴をどう埋めるかという「出口」の設計は、多くの企業で手つかずのままになっているのが実態です。
欠員の負荷は「個人の踏ん張り」に転嫁され、退職の連鎖を招く
同調査では、欠員が発生したチームとそうでないチームを比較しており、欠員が発生すると、後任・上司ともに残業時間が長くなり、バーンアウト傾向が高まることが確認されています。さらに、欠員を埋め合わせる後任自身の退職意向も高まる傾向が示されました。
欠員発生後に生じたリスクやトラブルとして最も回答が多かったのは「他にも退職する人がいそうだ」で40.0%にのぼり、「必要な情報や資料が見当たらなかった」の33.7%が続きました。一人の退職が周囲の負荷を押し上げ、それが次の退職の予感につながるという「連鎖」の構図が、数字のうえでも裏づけられています。
引き継ぎの実態にも目を向ける必要があります。退職や中長期休の取得にあたって、前任者が業務の引き継ぎを「行っている」割合は77.6%にとどまり、5人に1人以上(22.4%)が引き継ぎをしないまま職場を離れていました。引き継ぎを受けた後任のうち、「引き継ぎ時間が足りなかった」と感じた割合は47.1%と半数近くにのぼり、前任者側の不足感(約3割)を大きく上回っています。特に「商品開発・研究職」「事務職」で後任の不足感が高い傾向がみられました。
同調査は、引き継ぎ時間を確保しにくいチームの特徴として、「ハイコンテクスト文化(空気を読むことが求められ、暗黙のルールが重視される)」「トップダウン志向」「日常的に休みが取りにくい」という組織文化を挙げています。欠員は、発生のたびに個別対応するだけでなく、日頃の組織文化そのものを点検する必要があるといえます。
退職の連鎖を防ぐオフボーディング設計の三つの視点
採用した人材を組織になじませる「オンボーディング」に比べ、退職者を送り出す「オフボーディング」は後回しにされがちです。しかし、欠員の77%が補充されない現実を踏まえると、退職が決まった時点からの対応こそが、残された社員の定着を左右します。ここでは三つの視点から、具体的な実践ステップを解説します。
視点1:欠員発生時の対応を「その場対応」から「事前ルール」に変える
欠員が生じるたびに場当たり的に対応していると、対応の質が管理職の力量に左右されてしまいます。退職や長期休業の申し出があった時点で自動的に動き出す運用ルールを、あらかじめ用意しておきます。
実施チェック
- 退職・長期休業の申し出を受けてから、引き継ぎ計画の作成・後任アサイン・補充要否の判断までの標準的な期限とフローを定めているか
- 欠員の補充を求人に出すか、既存メンバーで対応するかの判断基準を、管理職の裁量だけに委ねていないか
- 欠員発生後、後任・上司の残業時間や負荷状況を一定期間追跡する仕組みがあるか
視点2:引き継ぎ時間を「前任の善意」ではなく業務として確保する
引き継ぎが不足する背景には、前任者が「最後まで迷惑をかけたくない」と遠慮したり、日常業務に追われて時間を確保できなかったりする事情があります。引き継ぎを個人の努力任せにせず、業務として明確に位置づけます。
実施チェック
- 退職・長期休業が決まった時点で、引き継ぎに充てる時間を前任者のスケジュールに業務として組み込んでいるか
- 引き継ぎ資料の作成をチームメンバー全体で分担するなど、前任者一人に負担を集中させない体制になっているか
- 「日常的に休みが取りにくい」「トップダウン志向」など、引き継ぎ時間を圧迫する組織文化がないか、定期的に点検しているか
視点3:業務の割り振り方針を「育成」か「平等」か意図的に選ぶ
同調査では、欠員発生時の業務の割り振り指示として、類似業務の担当者に引き継がせる「横滑り」と、部下の業務量を平準化する「均等割り」が多いことが分かっています。それぞれに一長一短があるため、状況に応じて意図的に選ぶことが重要です。
実施チェック
- 特定のメンバーを育成する狙いで業務を割り振る場合、上司自身が業務を巻き取りすぎて負荷過多にならないよう手当てしているか
- 業務量を平等に配分する場合、メンバーの積極性や責任感が育ちにくくなる副作用を、他の育成機会で補っているか
- 割り振り方針を、上司の思いつきではなく、チームの状況(繁忙度・メンバーの経験年数など)に応じて選んでいるか
おわりに
欠員の77%が補充されないという現実は、多くの企業にとって他人事ではありません。抜けた穴は、結局のところ残された社員の残業時間や負荷というかたちで埋め合わされ、それが「他にも辞めそうな人がいる」という不安につながっていきます。退職が決まった瞬間から始まるオフボーディングを、個々の管理職の善意やその場の判断に委ねるのではなく、事前のルール・引き継ぎ時間の確保・業務割り振り方針という三つの視点から組織として設計することが、退職の連鎖を防ぐ第一歩になります。
出典:株式会社パーソル総合研究所「オフボーディング(欠員発生時の組織的取組)に関する定量調査」(2024年11月27日発表、全国の正社員20~59歳を対象にしたスクリーニング調査(n=37,244)を経て、前任者・後任者・上司の立場別に1,350人前後を対象に2024年2月16日~20日実施)
オフボーディングの設計や、退職の連鎖を防ぐ組織づくりについては、外部の専門家に相談することも一つの方法です。詳しい研修サービスの資料は、以下よりご請求いただけます。
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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