50代正社員の46.3%が「年下上司」の下で働いているという調査結果があります。高年齢者雇用安定法の改正で継続雇用が進むなか、年齢と役職が逆転する組織は今後も増えていきます。年上部下と年下上司が信頼関係を築くための5つの実践ステップを、公的統計と民間調査データをもとに解説します。
「年上部下」「年下上司」とは
「年上部下」とは、年齢が自分より上の社員を部下として管理する状況を指す言葉です。反対に、部下より年齢が下の社員が上司であるケースは「年下上司」と呼ばれます。従来の日本企業では、年齢や勤続年数に応じて役職が上がる年功序列型の人事制度が一般的でした。しかし近年は、成果や能力に基づいて登用を行う企業が増えたことに加え、高年齢者雇用安定法の改正によって65歳までの雇用確保が事業主に義務づけられたことで、定年後に再雇用された社員が、かつての部下や年下の社員の下で働くケースも珍しくなくなっています。
数字で見る「年上部下」の広がり
株式会社ジェイックが2025年5月に実施した調査(50〜59歳の正社員300名が対象、調査委託先は株式会社アスマーク)によると、直属の上司が「年下」と回答した人は合計46.3%にのぼりました。内訳を見ると、「50代」の年下上司が26.3%、「30〜40代」の年下上司が18.0%で、世代の異なる年下上司を持つ50代社員もおよそ2割存在します。
「あなたの直属の上司は年下ですか」という質問に対し、「年上」が53.7%、「年下」が合計46.3%となり、50代正社員のおよそ半数が年下の上司のもとで働いていることがわかった(株式会社ジェイック「プレシニア社員の『年下上司』に関する実態調査」2025年6月19日発表)
サイボウズチームワーク総研が2023年に実施した調査でも、30〜50代会社員のうち直属の上司が年下である人は約20%、従業員2,000人以上の大企業に限ると約3割に達しています。
こうした状況は、今後さらに広がる見通しです。厚生労働省は2026年4月に適用を開始した新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」において、2025年4月に全面施行された65歳までの雇用確保措置(希望者全員が対象)に加え、70歳までの就業確保措置(事業主の努力義務)の実施率を2029年度までに40%以上に引き上げる目標を掲げました。2025年6月時点の実施率は34.8%であり、定年後の継続雇用がさらに広がるにつれて、「年上部下」を抱える管理職は今後も増えていくと見込まれます。
「年上部下」マネジメントでつまずきやすい3つのポイント
ジェイックの調査では、年下上司の仕事の仕方や考え方について「特になし」と答えた人は40.3%にとどまり、約6割の年上部下が何らかの違いを感じていることがわかりました。現場でよくつまずくポイントは、次の3つです。
- 接し方の思い込みのズレ:サイボウズチームワーク総研の調査では、年下上司の41.9%が「敬語・丁寧な言葉遣い」を重視すべきと考える一方、年上部下側でこれを重視する人は27.7%にとどまりました。年上部下が最も必要と感じているのは「話を聞く」姿勢です。
- 指摘・フィードバックのためらい:年齢が上の相手には指導や注意をしにくいと感じ、必要なフィードバックを先送りにしてしまう年下上司が少なくありません。
- 経験や知見を生かす場の不足:年上部下には「若い人の手本となるべき」(80.8%)「所属チームのパフォーマンス発揮の主力となるべき」(74.6%)といった期待が年下上司側から寄せられている一方、その経験を発揮できる役割が明確に用意されていないケースが見られます。
信頼関係を築く5つの実践ステップ
ステップ1:「年齢」ではなく「役割」で関係を定義し直す
着任後の早い段階で、上司と部下という関係は年齢の上下ではなく、業務上の役割分担であることを、双方の言葉で確認します。年上部下自身が「役職者としてではなく、経験を生かす立場として関わってほしい」と考えている場合も多いため、期待する役割を具体的にすり合わせることが出発点になります。
実施チェック:役職と年齢は別の軸であるという共通認識を、着任後の早い段階で言葉にして共有しましたか。
ステップ2:接し方の期待値を直接確認する
「年上だから丁寧に接するべきだ」という思い込みだけで距離を置かず、年上部下本人に望ましいコミュニケーションの取り方を尋ねます。ジェイックの調査では、年上部下が良好な関係を保つために意識していることとして「相手の立場を尊重し、役職に関係なく協力する」が52.5%で最多となっており、年上部下の側にも歩み寄る姿勢があることがうかがえます。
実施チェック:望ましい言葉遣いや距離感を、年上部下本人に直接確認する場を設けましたか。
ステップ3:経験を生かせる役割を具体的に用意する
「若手の手本」「チームの主力」としての期待に応えられるよう、後輩育成のOJT担当や特定領域の相談役など、経験を生かせる具体的な役割を業務分担として明文化します。役割が曖昧なままでは、豊富な経験や知見が発揮されずに終わってしまいます。
実施チェック:年上部下の経験を生かせる具体的な役割を、業務分担表や目標設定に明記していますか。
ステップ4:フィードバックを個人任せにせず仕組み化する
年齢が上の相手への指摘や注意は、上司個人の気の遣い方に左右されやすく、後回しにされがちです。評価面談や1on1のタイミングをあらかじめ定例化し、良い点も改善点も伝える機会を、個人の性格に依存しない仕組みとして設計します。
実施チェック:フィードバックを行う時期と方法が、上司個人の判断任せではなく、チームの仕組みとして決まっていますか。
ステップ5:人事が管理職の相談窓口とサポート体制を整える
ジェイックの調査担当者は、企業の人事担当者から「年上部下を持つ管理職層のマネジメントに課題がある」という相談が増えていると述べています。年下上司が一人で抱え込むことのないよう、人事は相談窓口や研修機会を用意し、組織として支える体制を整えることが重要です。
実施チェック:年下上司がマネジメントの悩みを相談できる窓口や研修機会を、人事として用意していますか。
まとめ
高年齢者雇用の広がりにより、「年上部下」は一部の企業だけの特殊な状況ではなく、今後多くの組織で標準的な形になっていきます。年齢ではなく役割で関係を定義し、接し方の期待値をすり合わせ、経験を生かす役割を用意したうえで、フィードバックと人事のサポート体制を仕組みとして整えることが、年上部下と年下上司の双方が力を発揮できる組織づくりにつながります。
自社に合った人材育成・組織開発の進め方についてご相談をご希望の方は、下記より資料請求ページへお進みください。
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
Next step
記事の内容を、自社に当てはめてみませんか。
Growth Survey は、心理的安全性・エンゲージメント・行動変容を定量化し、組織の現在地を可視化するサーベイです。 まずは3分診断で、おおよその現在地をつかむこともできます。