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【2026年最新】治療と仕事の両立支援が努力義務に|がん治療をしながら働く49.9万人を離職させない5つの実践ステップ

2026年4月、労働施策総合推進法の改正により治療と仕事の両立支援が事業主の努力義務になりました。がん治療をしながら働く人は49.9万人に上ります。診断後の離職を防ぎ、貴重な人材が働き続けられる職場をつくるための5つの実践ステップを解説します。

公開日
2026/09/10
更新日
2026/09/10
読了時間
8
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
治療と仕事の両立両立支援がん治療離職防止人材定着

2026年4月1日、労働施策総合推進法の改正により、企業が従業員の治療と仕事の両立を支援することが努力義務になりました。厚生労働省が2026年2月に告示した「治療と就業の両立支援指針」に基づく対応です。厚生労働省の特別集計によれば、がんの治療のために仕事を持ちながら通院している人は49.9万人に上ります。人手不足が続くなか、治療を理由に貴重な人材を手放さない体制づくりは、企業規模を問わず求められるテーマになっています。

なぜ今、治療と仕事の両立支援が必要なのか

国立がん研究センターの推計では、日本人男性の5人に1人、女性の6人に1人が70歳までにがんに罹患するとされています。医療の進歩によって入院期間は短くなり、通院しながら治療を続ける患者は増加を続けています。厚生労働省が令和4年国民生活基礎調査を特別集計した結果では、がん治療のために仕事を持ちながら通院している人は男性19.2万人、女性30.7万人の合計49.9万人でした。がんに限らず、脳卒中や心疾患、糖尿病、難病、メンタルヘルス不調など、長期の治療を続けながら働く従業員は、どの企業にも一定数いると考えられます。

それにもかかわらず、診断後に仕事を離れる人は少なくありません。厚生労働省が委託した実態調査では、がんと診断された後に依願退職または解雇された人の割合は、2003年調査で34.7%、10年後の2013年調査でも34.6%とほとんど改善していませんでした。自営業や家族従業者では、廃業に至った割合が17.1%に上ります。離職の時期を調べた研究では、治療を開始した後の離職が48.3%、治療を開始する前の離職が40.2%を占めており、体調や治療方針が定まる前に離職を決めてしまうケースも少なくないことがうかがえます。

内閣府の世論調査でも、通院しながら働き続けられる社会だとは「思わない」と答えた人は、2013年の68.9%から2023年には53.5%まで下がったものの、依然として過半数を占めています。両立を難しくする理由として多く挙げられたのは、体力的な負担、代わりに仕事をする人がいないこと、休むことを職場が認めてくれるか分からないことでした。制度や体力の問題に加えて、相談してよいのかが分からないという心理的なハードルが、離職を後押ししている実態がうかがえます。

治療と仕事の両立支援は、従業員のためだけの取り組みではありません。人手不足が深刻化するなか、経験を積んだ人材が治療を理由に離職すれば、代替要員の採用や教育に想定以上のコストがかかります。通院や療養と就業を両立できる職場かどうかは、既存社員の定着だけでなく、採用市場における評価にもつながる要素になりつつあります。

2026年4月の法改正で何が変わったのか

今回の法改正の根拠は、労働施策総合推進法の改正です。厚生労働省は2025年7月、2026年度から治療と仕事の両立支援が事業主の努力義務になることを公表し、2026年2月10日には事業主が講ずべき措置を具体的に示す「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)を告示しました。努力義務であるため罰則はありませんが、指針は労働局による助言や指導の根拠になるものであり、実質的な対応が求められます。

指針が対象とする疾病は、がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝疾患、難病、メンタルヘルス不調など、反復または継続して治療が必要な疾病です。風邪のように短期間で治る病気は対象に含まれません。年齢や役職を問わず、誰もが罹患しうる疾病を幅広く対象としている点が特徴です。

厚生労働省「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)は、事業主が講ずべき措置として、基本方針の周知、研修による意識啓発、相談窓口の明確化、両立支援に関する制度整備、事業場内外の連携の5点を示しています。

治療と仕事の両立支援を進める5つの実践ステップ

厚生労働省の指針は、事業主が事前に整えるべき取り組みを5つの観点で整理しています。自社の現状を点検しながら、優先順位をつけて着手することをおすすめします。

ステップ1 基本方針の表明と労働者への周知

経営層が治療と仕事の両立を支援するという方針を明確に示し、就業規則や社内報、社内ポータルなどを通じて全従業員に周知します。病気になっても相談してよいというメッセージを会社側から発信することが、従業員が声を上げやすい職場の土台になります。

  • 実施チェック:経営層が両立支援の基本方針を文書化しているか
  • 実施チェック:就業規則や社内ポータルなど、従業員が確認できる形で周知しているか

ステップ2 研修等による意識啓発

管理職やチームメンバーが、治療しながら働く同僚にどう接すればよいか分からず、かえって距離を置いてしまうことがあります。管理職向けの研修で両立支援の考え方や関連制度を伝え、現場での対応力を高めます。

  • 実施チェック:管理職向けに両立支援の研修を実施しているか
  • 実施チェック:一般従業員にも基礎知識を周知する機会を設けているか

ステップ3 相談窓口等の明確化

誰に、どのタイミングで相談すればよいかが分からないことが、従業員の孤立や早すぎる離職につながります。人事部門や産業保健スタッフなど相談先を明確にし、プライバシーに配慮した相談体制を整えます。

  • 実施チェック:相談窓口の担当者と連絡方法を明文化しているか
  • 実施チェック:相談内容の秘密が守られる仕組みになっているか

ステップ4 治療と就業の両立支援に関する制度、体制等の整備

時差出勤、時短勤務、休職からの段階的な復帰、通院のための休暇制度など、治療の状況に応じて選べる働き方の選択肢を用意します。既存の制度がある場合も、治療目的で使いやすい運用になっているかをあわせて見直します。厚生労働省の事例集では、通院治療のための休暇制度を独自に新設した企業や、在宅勤務やフレックスタイム制度で通勤の負担を軽減した企業などが紹介されています。

  • 実施チェック:通院や治療のために利用できる休暇、勤務制度があるか
  • 実施チェック:休職から復職までの流れを従業員向けに示しているか

ステップ5 事業場内外の連携

社内の人事、上司、産業医だけで対応しようとすると限界があります。労働者健康安全機構が養成する両立支援コーディネーターは、従業員と企業、医療機関の間に立って復職計画の調整を担う専門人材です。医療機関側にも、主治医が両立支援の助言を行った際に算定できる診療報酬「療養・就労両立支援指導料」が設けられており、治療にあたる医療機関の側にも両立支援に取り組む土壌が整いつつあります。主治医との情報共有や、産業保健総合支援センターといった外部の支援機関を積極的に活用しましょう。

  • 実施チェック:主治医との情報共有の方法(様式例の活用など)を決めているか
  • 実施チェック:産業保健総合支援センターなど外部の相談先を把握しているか

中小企業は「できることから」始める

両立支援というと大がかりな制度改定を思い浮かべがちですが、指針が示す取り組みの多くは、費用をかけずに始められます。基本方針を一枚の文書にまとめて周知すること、相談窓口を人事担当者の名前とともに明示することも、立派な第一歩です。産業保健総合支援センターは都道府県ごとに設置されており、無料で研修や個別相談に対応しています。治療と仕事の両立支援ナビには、製造業や運送業、金融機関、福祉施設など、業種や規模の異なる160社を超える取り組み事例が掲載されており、自社に近い事例を参考にすることもできます。専門人材を社内に置きにくい中小企業ほど、外部の支援機関を積極的に頼ることが、両立支援を軌道に乗せる近道になります。

まとめ

治療と仕事の両立支援は、2026年4月の法改正によって、企業規模を問わず取り組むべき努力義務になりました。がん治療をしながら働く49.9万人という数字が示す通り、治療を理由に貴重な人材を失うリスクは、どの企業にとっても身近な課題です。基本方針の周知から相談窓口の整備、外部機関との連携まで、指針が示す5つのステップを一つずつ形にしていくことが、従業員が安心して働き続けられる職場づくりにつながります。

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Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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