経済産業省は2026年3月9日、日本健康会議による「健康経営優良法人2026」の認定結果を発表しました。労働人口が減少を続けるなか、従業員の健康管理を経営課題として位置づける健康経営は、企業規模を問わず人材確保の実務に直結するテーマになっています。
「健康経営優良法人2026」、認定数は過去最多の26,850法人
健康経営優良法人認定制度は、特に優良な健康経営を実践する法人を経済産業省が「見える化」する目的で、2016年度に創設した制度です。日本健康会議が定める評価基準に基づき、大規模法人部門と中小規模法人部門の2部門で認定が行われます。
第10回となる「健康経営優良法人2026」では、大規模法人部門に3,765法人、中小規模法人部門に23,085法人の合計26,850法人が認定されました。前年の23,196法人から3,654法人増加し、2016年度の制度創設以来、過去最多を更新しています。上位の大規模法人には「ホワイト500」、上位の中小規模法人には「ブライト500」「ネクストブライト1000」の呼称が付与されました。
「健康経営優良法人2026」として、大規模法人部門に3,765法人、中小規模法人部門に23,085法人が認定されました。前年度の健康経営優良法人2025認定数(大規模法人部門3,400法人、中小規模法人部門19,796法人)に対し、両部門ともに大幅な増加が見られました。(経済産業省 2026年3月9日発表)
帝国データバンクの分析によると、中小規模法人部門の認定数は9年間で約62倍に拡大しました。制度がスタートした「健康経営優良法人2017」の318法人から、「健康経営優良法人2025」の19,796法人へと増加しています。健康経営が一部の大企業の取り組みにとどまらず、人材確保に悩む中小企業が活用する経営手法として定着しつつあることがうかがえます。
中小企業に立ちはだかる「認知度」と「やり方」の壁
認定数は伸びている一方で、健康経営への取り組みには企業規模による差が残っています。帝国データバンクが2023年9月に実施した調査では、健康経営に「取り組んでいる」企業は56.9%でした。従業員規模別に見ると、「1,000人超」の企業が82.6%であったのに対し、「5人以下」の企業は40.7%にとどまりました。
同調査で、健康経営に「取り組んでいない」理由を尋ねたところ、「適当な人材確保が困難」が39.0%で最も多くなりました。次いで「効果的な実施方法が分からない」(37.3%)、「費用対効果が分からない」(29.3%)が続いています。人手不足そのものが、健康経営に取り組む余力を奪っているという状況がうかがえます。
経営上の重要課題として明確に目標設定している企業は1割台にとどまっており、多くの企業が「何から始めればよいか分からない」という段階にあると考えられます。
認定によって得られる主なメリット
健康経営優良法人に認定されると、ハローワークに提出する求人票へ「健康経営優良法人」との記載が認められるほか、融資条件を優遇する金融機関があります。自治体の公共調達では加点の対象となるほか、独自の表彰制度を設ける自治体もあります。人材の獲得競争が続くなかで、健康経営への投資をコストではなく人材戦略の一部として位置づける企業が増えています。
健康経営優良法人(中小規模法人部門)を目指す5つの実践ステップ
中小規模法人部門の認定基準は、経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令遵守・リスクマネジメントの5分野で構成されています。自社の状況に合わせて、次の5つのステップで準備を進めることをお勧めします。
ステップ1.健康宣言を文書化し、社内外へ発信する
経営層が健康経営の意義を理解し、「健康宣言」として文書化することが出発点です。社内報や採用サイトなど、従業員だけでなく求職者や取引先にも届く方法で発信します。
- 実施チェック:経営者自身が健康診断を受診しているか
- 実施チェック:健康宣言を発信する媒体を決めているか
ステップ2.保険者の「健康宣言事業」に参加する
中小規模法人部門の認定には、協会けんぽや健康保険組合連合会の各支部が実施する「健康宣言事業」への参加が必須です。加入する保険者が実施していない場合は、自治体の健康宣言事業への参加や、自社独自の宣言でも代替できます。
- 実施チェック:自社が加入する保険者の健康宣言事業の有無を確認したか
- 実施チェック:参加手続きの窓口と申込期限を把握しているか
ステップ3.健康づくり担当者を配置し、実施体制を整える
専門部署の新設は必須ではありませんが、健康づくりの担当者を明確に定め、求めに応じて40歳以上の従業員の健診データを提供できる体制を整える必要があります。産業医や保健師がいない中小企業では、加入する保険者や外部の専門機関と連携して対応します。
- 実施チェック:健康づくり担当者を指名し、役割を社内に周知しているか
- 実施チェック:40歳以上の従業員の健診データを管理・提供できる状態か
ステップ4.具体的な施策を実行する
職場の受動喫煙対策・長時間労働の是正・メンタルヘルス対策・社内のコミュニケーションを促す取り組みなど、定期健康診断以外にも複数の施策を組み合わせて実行します。近年は、育児や介護と仕事の両立支援、高年齢従業員の体力や健康状況に応じた配慮も評価項目に加わっています。
- 実施チェック:複数の部署が連携して施策を進めているか
- 実施チェック:従業員向けの研修や教育の機会を設けているか
ステップ5.取り組みを評価し、開示する
実施した施策の効果を、従業員アンケートや健診データの変化などで振り返り、翌年度の改善につなげます。評価結果を社内外に開示する姿勢自体も評価の対象となるため、取り組みの過程を記録に残しておくことが重要です。
- 実施チェック:施策の効果を測定する指標を決めているか
- 実施チェック:評価結果を次年度の計画に反映する仕組みがあるか
健康経営は人材育成と地続きの取り組みです
健康経営優良法人の評価項目には、従業員教育やコミュニケーション促進、管理職向けの研修など、人材育成の取り組みと重なる部分が数多く含まれています。健康経営は、福利厚生の一施策として単独で進めるより、研修設計や組織開発の計画と一体で進める方が、限られた人員でも認定要件を満たしやすくなります。
まとめ
健康経営優良法人の認定数は、2026年に26,850法人と過去最多を更新しました。中小規模法人部門だけを見ても、制度創設時の318法人から9年間で60倍を超える規模に拡大しています。一方で、健康経営に取り組めていない企業の多くは、人材や時間の不足に加えて「やり方が分からない」という壁に直面しています。健康宣言の発信から評価・開示までの5つのステップを一つずつ形にしていくことが、認定の獲得はもちろん、従業員が長く働き続けられる職場づくりにもつながります。
健康経営の推進や、認定要件にも含まれる従業員教育・管理職研修の設計でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
Next step
記事の内容を、自社に当てはめてみませんか。
Growth Survey は、心理的安全性・エンゲージメント・行動変容を定量化し、組織の現在地を可視化するサーベイです。 まずは3分診断で、おおよその現在地をつかむこともできます。