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人材育成に「問題がある」事業所は80.1%|指導する人材の不足と早期離職を防ぐ三つの設計

厚生労働省が2026年7月に公表した令和7年度調査では、能力開発や人材育成に問題があるとする事業所が80.1%に上りました。指導する人材の不足や早期離職が主な要因です。人事担当者・経営層が押さえておくべき三つの設計を解説します。

公開日
2026/09/12
更新日
2026/09/12
読了時間
7
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
人材育成人材開発支援助成金キャリアコンサルティング

人材育成の現場では、「教える人がいない」「時間をかけて育てても辞めてしまう」といった声が長く聞かれてきました。この感覚は、一部の企業の工夫不足ではなく、日本企業に共通する構造的な課題であることを、厚生労働省の最新調査が改めて示しています。

厚生労働省は2026年7月31日、令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表しました。事業所調査によると、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所の割合は80.1%でした。前回調査より0.2ポイント上昇しており、ここ数年は7割台後半から8割台という高い水準が続いています。

能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所の割合は80.1%であり、問題点の内訳をみると、「指導する人材が不足している」(59.5%)の割合が最も高く、「人材を育成しても辞めてしまう」(51.6%)、「人材育成を行う時間がない」(45.5%)と続いている。(厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」2026年7月31日公表)

この事業所調査は、常用労働者30人以上を雇用する7,194事業所を対象に実施され、有効回答率は54.2%です。企業規模や業種を問わず、幅広い現場の実感を反映した数字だといえます。本記事では、指導する人材の不足、早期離職、育成時間の不足という三つの理由に向き合う具体的な設計を、実施チェックとあわせて紹介します。

人材育成が進まない、三つの理由

三つの理由は、互いに影響し合いながら一つの流れを作っていると考えられます。指導する人材が不足すると、一人ひとりの育成に十分な時間を割けなくなります。時間をかけられない育成は成果につながりにくく、育てられる側も成長を実感できないまま離職してしまいます。そして人材が育つ前に辞めてしまえば、次の指導者となる人材がまた不足するという流れです。

雇用形態による差も見逃せません。同じ調査では、正社員に対して計画的なOJT(職場内訓練)を実施した事業所は60.6%であるのに対し、正社員以外では25.1%にとどまりました。人手不足のなか非正社員の戦力化が課題になっている企業ほど、この差が経営上のリスクになります。

体制の面でも、育成を支える土台が十分に整っていない実態が浮かび上がります。事業内職業能力開発計画をいずれの事業所においても作成していない企業は79.8%、職業能力開発推進者をいずれの事業所においても選任していない企業は82.2%に上ります。計画も担当者も定めないまま日々の業務の合間に育成を行おうとすれば、時間が確保できないのは当然の結果だといえます。

指導する人材の不足、早期離職、育成時間の不足に取り組む三つの設計

ここからは、調査結果が示す三つの理由に対応する具体的な設計を、実施チェックとあわせて紹介します。

設計1:指導する人材を、特定の社員に依存させない

指導する人材が不足しているという回答は59.5%と、選択肢のなかで最も高い割合でした。多くの企業では教育を一人の管理職や熟練社員に任せきりにしており、その社員が異動や離職をすると育成の仕組みごと失われてしまいます。

同じ調査では、労働者が行った能力開発の成果を評価し、処遇に反映させている事業所は72.8%に上ります。反映の内容は、正社員では賃金の引き上げ(87.6%)、役職等の昇進・昇格(52.6%)の順に多くなっています。指導や育成を担う役割そのものを、評価と処遇で報われる仕事として位置づけることが、指導する人材を増やす近道になります。

  • 実施チェック:新入社員や中途採用者への教育を、複数人が交代で担当する体制になっているか
  • 実施チェック:指導や育成の役割を担った社員を、人事評価や処遇に反映する基準があるか
  • 実施チェック:自社内の教育だけに頼らず、民間の教育訓練機関や公的な職業訓練機関を組み合わせているか

設計2:育成した人材が定着する、面談とキャリア支援を組み込む

人材を育成しても辞めてしまうという回答は51.6%でした。育成への投資が定着につながらなければ、企業にとっての損失は二重になります。同じ調査で、キャリアコンサルティングを行う仕組みを正社員に対して導入している事業所は48.4%にとどまり、半数を超える事業所にはまだこの仕組みがありません。

仕組みを導入している事業所では、「労働者の仕事への意欲が高まった」(44.9%)、「自己啓発する労働者が増えた」(36.7%)といった効果が報告されています。労働者の主体的なキャリア形成に向けた取組としては、「上司による定期的な面談の実施(1on1ミーティング等)」が69.8%と最も高く、日常的な対話の積み重ねが土台になっていることがわかります。

  • 実施チェック:新入社員や若手社員に対して、上司以外にも相談できる窓口(1on1、メンター制度、キャリアコンサルティング等)が用意されているか
  • 実施チェック:育成の成果を、賃金や昇進・昇格、配置転換といった処遇に結びつける基準があるか
  • 実施チェック:定期的な面談を、人事評価だけの場にせず、労働者自身の希望や将来像を聞く場としても機能させているか

設計3:「育成の時間」を、個人の努力ではなく業務設計で確保する

人材育成を行う時間がないという回答は45.5%でした。同じ調査では、教育訓練休暇制度を導入している企業は5.7%、教育訓練短時間勤務制度を導入している企業は4.7%にとどまり、働きながら学ぶための制度整備はまだ広がっていません。

導入を予定していない企業に理由を尋ねると、いずれの制度についても「代替要員の確保が困難であるため」が最も多い回答でした。育成の時間は、個人の頑張りに委ねず、代替要員の配置や業務の割り振りとあわせて設計することが欠かせません。

  • 実施チェック:誰が育成の計画を立て、進捗を確認するのか、担当者や役割が明文化されているか
  • 実施チェック:新入社員や中堅社員に対する計画的なOJTについて、年間の実施時期や内容があらかじめ決まっているか
  • 実施チェック:教育訓練休暇制度や短時間勤務制度など、業務時間内に学ぶための制度導入を検討したことがあるか

まとめ

指導する人材の不足、早期離職、育成時間の不足という三つの理由は、どれか一つを解決すれば済むものではありません。指導する人材を複数の社員に分散させ、育成した人材が定着する仕組みを整え、育成の時間を業務設計に組み込むという三つの設計をあわせて進めることで、人材育成は個人の頑張りに頼るものから、組織の仕組みへと変わっていきます。

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Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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