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両利きの経営とは?深化と探索を両立する経営理論を解説
はじめに
既存事業の効率を高めながら、同時に新規事業への挑戦も求められる——そうしたジレンマを抱える企業は少なくありません。短期の収益と中長期の成長、安定と変革、効率と創造といった、一見相反する二つの軸を両立させる経営の在り方を理論化したのが両利きの経営です。本記事では、両利きの経営の概念と、組織・人事への示唆、実務上の留意点を整理します。
両利きの経営とは?
両利きの経営とは、既存事業を深掘りして競争力を高める「深化」と、新しい事業領域や技術を探す「探索」の両方を同時に追求する経営アプローチのことです。スタンフォード大学のチャールズ・A・オライリー教授と、ハーバード大学のマイケル・L・タッシュマン教授の研究を通じて広く知られるようになりました。
「両利き」という比喩は、右手と左手をどちらも使いこなすように、企業が深化と探索という性質の異なる二つの活動を併存させることを表しています。深化は効率や品質、規律を重視し、探索は実験や学習、柔軟性を重視します。両者は組織文化や人材要件、評価指標、意思決定プロセスのいずれにおいても対照的であるため、同じ組織でそのまま両立を図ろうとすると、一方が他方を駆逐してしまう傾向があります。両利きの経営は、構造や文化の工夫を通じて両者の共存を可能にする方法を論じる理論です。
両利きの経営がよく使われるシーン
両利きの経営という概念は、新規事業開発の組織設計、中期経営計画の戦略議論、DX推進体制の検討、社内ベンチャーや出島組織の設計、人材ポートフォリオの構築、後継者育成計画、評価制度や報酬制度のメリハリ設計、組織文化変革の議論、M&A後の統合プロセス設計など、戦略と組織を接続するあらゆる場面で参照されます。
とくに、成熟事業と新規事業の両輪を回したい大企業や、新規事業がなかなか育たないと悩む組織にとって、重要な参照点となります。
両利きの経営を理解することの重要性
人事領域においても、両利きの経営は重要な示唆を与えます。深化を担う人材と探索を担う人材とでは、求められるコンピテンシーや適切な評価指標、合うリーダーシップスタイル、望ましいキャリアパスがまったく異なります。同一の評価制度や育成プログラム、報酬体系を画一的に適用すると、どちらかの活動が機能不全に陥り、探索が育たない組織や深化が劣化する組織になりかねません。
両利きの経営を理解することで、人事は人材ポートフォリオの設計者としての役割を担えるようになります。事業のステージや組織ユニットの性質に応じて評価・処遇・育成・キャリア設計を柔軟に切り分け、必要な人材を必要な場所に配置し育成することは、経営戦略と人事戦略をつなぐ実践そのものです。
実務で活かすためのチェックポイント
- 事業ポートフォリオを分類する:深化中心・探索中心・両立型に整理し必要な人材像を明示します。分類が人材要件の明確化につながります。
- 探索領域の評価指標を見直す:短期成果ではなく学習や実験、失敗からの学びを評価に組み込みます。指標の転換が挑戦を後押しします。
- 探索組織のリーダー要件を選抜・育成に反映する:曖昧さへの耐性や実験的姿勢を重視します。要件の明確化が適材の配置を助けます。
- 深化と探索を往復するキャリアパスを設計する:両方の経験を持つ人材を計画的に育成します。往復の経験が組織全体の橋渡し役を育てます。
- 経営チームの両利き志向を点検する:意思決定プロセスや構成の見直しも視野に入れます。経営層自身の姿勢が現場の両立を左右します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 両利きの経営は中小企業にも適用できますか?
A. 規模を問わず適用可能です。組織を物理的に分けるよりも、時間や予算、人材の一定割合を意図的に探索活動へ振り向ける進め方が現実的な選択肢になります。
Q2. 深化と探索を同じチームで両立できますか?
A. 同一チームでの両立は難易度が高いとされます。組織を物理的に分ける方法、文化や運用で切り分ける方法、時期で切り替える方法など、複数のアプローチが提唱されています。
Q3. 探索が成果を出さない場合、撤退の判断はどうすべきですか?
A. 探索は失敗が前提の活動であり、短期の成果だけで評価すべきではありません。一方で無制限に続けるべきでもないため、学習量や検証の進捗を軸に段階的な判断を行う設計が推奨されます。
Q4. 深化を担う人材と探索を担う人材は、入れ替え可能ですか?
A. まったく別の資質ではありませんが、求められる姿勢は異なります。計画的な異動や越境経験を通じて、両方の視点を持つ人材を段階的に育てていくアプローチが現実的です。
Q5. 両利きの経営を進めるうえで、最初の障壁になりやすいことは何ですか?
A. 既存事業の評価指標や成功体験を探索領域にもそのまま当てはめてしまうことです。深化の物差しで探索を測ると、芽が出る前に活動が縮小してしまいます。
自社の人材育成・組織課題に関するご相談
深化と探索を両立させる組織づくりには、人材ポートフォリオの設計から評価制度の見直しまで、一貫した人事戦略が求められます。「新規事業が育たない」「既存事業と新規事業の両立に悩んでいる」といったご相談は、貴社の状況に合わせて承ります。
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