⌖ Detail
はじめに
組織の課題を語るとき、私たちはつい、うまくいっていないことに目を向けがちです。しかし、問題の指摘ばかりが続くと、現場の意欲はかえって失われていくことがあります。組織が本来もっている強みや成功の体験に光を当て、そこから未来を描こうとする手法が、アプリシエイティブインクワイアリーです。組織開発や人材育成に携わる人にとって、組織の前向きな力を引き出す手がかりになります。本記事では、その意味や用いられる場面、実務で押さえておきたいポイントを整理してご紹介します。
アプリシエイティブインクワイアリーとは?
アプリシエイティブインクワイアリーとは、組織や個人がもつ強み、価値、可能性に着目し、その肯定的な側面を探究することを通じて変革を進める組織開発の手法です。頭文字をとってAIと呼ばれることもあります。アプリシエイティブは価値を認める、真価を見いだすという意味を、インクワイアリーは問いかけ、探究するという意味をもちます。
従来の組織開発は、問題点を洗い出し、その原因を取り除くという問題解決型の発想に立つことが多くありました。これに対しアプリシエイティブインクワイアリーは、組織がうまくいっている瞬間や、人々が活き活きとしている場面に注目し、その源泉を明らかにしようとします。欠けているものを補うのではなく、すでにある強みを伸ばすという視点に立つ点に特徴があります。
この手法では、4Dサイクルと呼ばれる流れがよく知られています。強みや成功体験を発見するディスカバリー、ありたい姿を思い描くドリーム、その実現に向けた仕組みを設計するデザイン、そして実際の行動へと移すデスティニーの四つの段階です。対話を重ねながらこの流れをたどることで、組織の前向きな変化を促していきます。
広告
アプリシエイティブインクワイアリーがよく使われるシーン
この手法は、組織の活性化や変革を目指す場面で用いられます。たとえば、組織風土を前向きなものへ変えたいとき、部門を越えた対話の場をつくりたいとき、ビジョンを参加者とともに描きたいときなどです。ワークショップやミーティングの設計に取り入れられることもあります。
組織運営の現場では、問題の指摘が繰り返されるうちに、関係者が疲れ、前向きな発想が生まれにくくなることがあります。アプリシエイティブインクワイアリーの考え方は、そうした状況に変化のきっかけをもたらします。強みや成功体験を語り合う過程を通じて、参加者の意欲や当事者意識が高まりやすくなるためです。組織の規模や階層を越えて、多くの人が対話に加わる場面でも用いられています。
アプリシエイティブインクワイアリーを理解することの重要性
この手法を理解することは、組織開発に複数のアプローチがあることを知る助けになります。問題解決型の発想は、欠点を直すうえで有効である一方、組織の活力を引き出すという点では限界をもつこともあります。強みに着目するという視点を併せもつことで、状況に応じた働きかけを選べるようになります。
人材育成やマネジメントの観点からは、肯定的な問いかけが人の意欲に与える影響を捉える手がかりになります。何ができていないかではなく、何がうまくいっているかを問うことで、人は自らの可能性に目を向けやすくなります。ただし、強みに注目することは、課題から目をそらすことではありません。組織の現実を踏まえたうえで、その強みをどう未来へ生かすかを考える姿勢が大切です。前向きな問いを起点としながらも、地に足のついた変革へとつなげていく視点が求められます。
✺ Editor’s Memo
現場での運用は、業界・規模・組織文化によって大きく変わります。記事内のインタビュー事例も併せて参考にしてください。
— SHARE with カイシャの育成論 編集部