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バウンダリーレス・キャリアとは?プロティアン・キャリアとの違いと人事施策への活かし方を解説
はじめに
終身雇用を前提とした昇進モデルだけでは、従業員のキャリア観の変化を捉えきれない場面が増えています。転職や副業、社外での学びによって自らキャリアを築く人材が増える中、その動きを説明する理論のひとつがバウンダリーレス・キャリアです。中途採用の選考基準や、副業に関する社内制度を検討する際の視点としても参照されています。本記事では、概念の内容と実務での活用場面、人材育成の観点から押さえておきたいポイントを解説します。
バウンダリーレス・キャリアとは?
バウンダリーレス・キャリアとは、特定の組織の枠にとらわれず、個人が主体となって形成していくキャリアのあり方を指す概念です。1996年に経営学者のマイケル・アーサーとデニス・ルソーが編集した書籍によって体系化されました。
従来のキャリア論では、ひとつの企業に入社し、社内での経験や昇進を積み重ねる組織内キャリアが標準的なモデルとされてきました。これに対しバウンダリーレス・キャリアは、転職や独立、副業、社外のネットワークでの活動といった、組織の境界を越えた経験の積み重ねによってキャリアが形成されるという見方を示します。個人が自身の価値観や専門性を軸にキャリアを主導する点で、同じく1990年代に提唱されたプロティアン・キャリアの考え方とも近い関係にあります。両者はしばしば、組織主導から個人主導へとキャリア観が移り変わる流れを説明する理論として、あわせて紹介されます。提唱から30年近くが経った現在も、転職や副業が一般化した労働市場を説明する枠組みとして、人材開発の研究や実務の双方で参照され続けています。
よく使われるシーン
副業や兼業を認める制度を検討する場面で使われます。中途採用者の経歴を評価する際、複数の組織や職種を経験してきた背景を前向きに捉える場面でも使われます。従業員向けのキャリア研修で、社内でのキャリアパスに加えて社外での経験の意味づけを伝える場面でも用いられます。人材の定着施策を検討する際、社外に目を向ける従業員をどう位置づけるかを議論する場面でも参照されます。退職者との関係を維持し、将来の協業や再雇用につなげる施策を検討する場面でも関連する考え方として取り上げられます。
バウンダリーレス・キャリアを理解することの重要性
人材の流動性が高まる中、社外での経験を積んだ人材を自社にとって魅力のない存在と捉えるか、多様な視点をもたらす人材と捉えるかで、採用や育成の方針は大きく変わります。バウンダリーレス・キャリアの考え方を理解しておくと、転職経験者の評価基準や、副業を通じて得た知見を社内に還元してもらう仕組みづくりに役立ちます。一方で、自社の魅力を高めなければ人材の流出を招くという側面もあるため、経営層や人事部門がこの概念を踏まえて、働き続けたいと思われる組織づくりに取り組む必要があります。人材の出入りを前提とした組織運営へと発想を切り替えることが、これからの人事戦略には求められます。副業や転職を経て自社に戻ってくる人材を受け入れる体制を整えることも、長期的な人材確保の一つの選択肢となります。
実務で活かすためのチェックポイント
中途採用の選考基準で、複数の職場や職種を経験した候補者の強みを評価する視点を持てているかを確認します。
副業や社外活動を通じて得たスキルを、社内で発揮してもらう機会を用意しているかを点検します。
キャリア面談で、社内の昇進だけでなく社外での学びの機会についても話し合っているかを確認します。
離職者向けに、退職後も関係を維持するアルムナイネットワークのような仕組みを検討します。
自社で働き続ける意義を従業員に伝える機会を、定期的に設けているかを点検します。
よくある質問
バウンダリーレス・キャリアとプロティアン・キャリアはどう違いますか。
プロティアン・キャリアは、個人が自身の価値観に基づいて主体的にキャリアを形成する姿勢そのものに焦点を当てる概念です。バウンダリーレス・キャリアは、組織の枠を越えて経験を積み重ねるという、キャリアの形態や経路の広がりに焦点を当てる概念です。両者は互いに補い合う関係にあります。
この考え方は転職を推奨するものですか。
転職そのものを推奨する概念ではなく、組織にとらわれない視点でキャリアを捉える考え方を説明したものです。
日本企業でも当てはまりますか。
終身雇用を前提とした慣行が根強い一方、転職市場の拡大や副業解禁の流れを受けて、日本企業でも当てはまる場面が増えています。
人事担当者は何から着手すればよいですか。
中途採用の評価基準の見直しや、副業に関する社内規程の整備から着手する例が多く見られます。
離職の増加につながりませんか。
社外経験を積極的に評価する姿勢と、自社で働く魅力を高める取り組みを両立させることで、単純な離職の増加には直結しないと考えられています。
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