⌖ Detail
DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは|意味・3要素・推進のポイント
はじめに
「DEI」は、近年のダイバーシティ推進においてグローバルスタンダードとなっている考え方です。従来の「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」に「エクイティ(公正性)」の概念を加えた枠組みであり、属性に応じた個別の支援を通じて実質的な公正を実現することを志向します。本稿では、DEIの基本概念、3つの要素の違い、推進する際の実務ポイントを整理いたします。
DEIとは?
DEIとは、Diversity(多様性)、Equity(公正性)、Inclusion(包摂性)の3つの英単語の頭文字を取った概念です。組織が多様な属性を持つ人材を擁し、それぞれが公正に機会を得られ、組織の一員として尊重されている状態を目指す統合的な枠組みを指します。
3つの要素は、それぞれ次のような意味を持ちます。
ダイバーシティ(多様性)は、組織を構成する人材の属性が多様であることを指します。性別、年齢、国籍、人種、宗教、性的指向、障害の有無、価値観、働き方、経歴など、目に見える属性と見えない属性の双方を含みます。
エクイティ(公正性)は、機会の平等(イコーリティ)を一歩進めた概念で、個々の状況や出発点の違いを踏まえ、必要な支援を個別に提供することを指します。同じ機会を「同じように」提供するのではなく、結果として公平になるよう「必要に応じて」配分するアプローチです。
インクルージョン(包摂性)は、組織内のメンバーがそれぞれの違いを受け入れられ、自分らしく貢献できる状態を指します。組織への帰属感、心理的安全性、意思決定への参画といった要素を含みます。
DEIが従来のD&Iと異なる点は、エクイティが明示的に組み込まれていることです。属性によって直面する課題が異なる以上、画一的な機会提供では本質的な公正に届かないという認識が広がり、結果としてエクイティの概念が枠組みに加わりました。
よく使われるシーン
DEIという言葉は、企業のサステナビリティレポートやESG情報開示、人的資本経営の文脈で頻繁に登場します。社外への説明責任や投資家向けの開示において、DEIへの取り組みが評価指標として扱われる場面が増えています。
人事戦略の策定においても、中期計画にDEIの推進方針を明記する企業が一般的になりました。採用、評価、報酬、育成、配置といった各人事領域における方針が、DEIの観点から再設計されています。
国際的なグループ企業や海外拠点を持つ組織では、グローバル共通の人事方針としてDEIが用いられ、各国・各拠点で具体化される運用が一般化しています。
DEIを理解することの重要性
DEIの本質を正しく理解することは、人事担当者にとって以下の点で重要です。
第一に、施策設計の前提が変わります。エクイティの概念を踏まえると、属性に応じた個別配慮や合理的配慮が標準的な要件となり、画一的な制度設計の限界が見えてきます。
第二に、人的資本開示との接続が見えてきます。国内外の開示基準で、DEIに関する数値や定性情報の開示が求められるケースが増えており、施策と開示の整合性が問われます。
第三に、組織文化の方向性が定まります。DEIの3要素を組織の言葉として根付かせることで、現場での意思決定や日常のコミュニケーションに一貫した基準が生まれます。
実務チェックポイント5項目
- 3要素を組織の言葉で定義する — 多様性・公正性・包摂性のそれぞれが自社にとって何を意味するかを、抽象論ではなく具体例とともに定義します。海外のフレームをそのまま輸入するのではなく、自社の文脈に翻訳する作業が欠かせません。
- エクイティの観点で既存制度を点検する — 採用要件、評価基準、研修機会、配置や昇進のプロセスについて、特定の属性に不利が生じていないかを、データで確認します。
- 指標とKPIを設定する — 属性別の比率、賃金格差、エンゲージメントスコアの属性別差分など、複数の指標を組み合わせて進捗を測定します。
- 経営層のコミットメントを確保する — DEIは現場での実行とともに、経営層の明確なコミットメントが推進力となります。経営アジェンダとして位置付け、定期的に発信する仕組みを整えます。
- 開示との整合を意識する — 社内施策と社外開示が乖離しないよう、人的資本開示の担当部門と連携した取り組みを設計します。
FAQ
Q1. D&IからDEIへ用語を変えるべきですか?
A1. 用語の更新そのものよりも、エクイティの概念を組織として持つことが重要です。すでにD&Iという言葉が浸透している場合は、その枠組みの中にエクイティの観点を組み込む形でも問題ありません。
Q2. エクイティと公平・平等の違いは何ですか?
A2. 平等(Equality)は同じものを同じように提供することを指し、エクイティ(Equity)は出発点の違いを踏まえて結果としての公正を目指すことを指します。たとえば、車椅子使用者にスロープを提供することはエクイティの考え方であり、全員に階段を提供するだけでは平等であっても公正とは言えません。
Q3. DEIに「B」を加えてDEIBとする企業もありますが、何が違いますか?
A3. Belonging(帰属感)を加えた概念で、組織への深い帰属感までを含めた表現です。インクルージョンをさらに発展させた概念として位置付けられており、組織の方針として用いる企業が増えています。
まとめ
DEIは、多様性・公正性・包摂性の3要素を統合した枠組みであり、現代の人事戦略における基盤的な考え方です。人事担当者として、3要素の正確な理解、自社文脈での定義、データに基づく点検、開示との整合といった観点で施策を設計することが求められます。
お問い合わせ
DEI推進方針の策定、施策設計、人的資本開示との連携などのご相談は、WONDERFUL GROWTHまでお気軽にお寄せください。
[お問い合わせはこちら](https://wonderful-growth.com/contact)
関連情報
- ダイバーシティ&インクルージョン
- エクイティ
- インクルージョン
- 人的資本経営
- 男女間賃金格差
✺ Editor’s Memo
現場での運用は、業界・規模・組織文化によって大きく変わります。記事内のインタビュー事例も併せて参考にしてください。
— SHARE with カイシャの育成論 編集部