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はじめに
「ダイナミックケイパビリティ」という言葉は、経済産業省が公表する「ものづくり白書」などをきっかけに、経営戦略の分野で注目されるようになった概念です。企業の変化対応力を表すこの言葉は、人材育成のあり方にも密接に関わっています。この記事では、ダイナミックケイパビリティの基本的な意味と、人事領域での活用の視点を解説します。
ダイナミックケイパビリティとは?
ダイナミックケイパビリティ(Dynamic Capability)とは、環境の変化に応じて、企業が自社の経営資源や組織のあり方を柔軟に再構成し、変革していく能力を指す経営理論です。日本語では「企業変革力」と訳されることが多く、2020年に経済産業省・厚生労働省・文部科学省が共同で公表した「ものづくり白書」で取り上げられたことをきっかけに、国内でも広く知られるようになりました。
この概念は、感知(センシング)、捕捉(シージング)、変容(トランスフォーミング)という3つの能力から構成されます。感知は、市場や技術の変化、事業機会や脅威をいち早く察知する能力です。捕捉は、感知した変化に対応して、既存の経営資源や組織体制を再構成し、機会を捉える能力です。変容は、獲得した新しい強みを組織全体に浸透させ、持続的な変革を実現する能力です。既存の強みを維持・活用する「オーディナリー・ケイパビリティ」と対になる概念として説明されることが多く、変化の激しい時代には両方の能力をバランスよく備えることが重要とされています。
よく使われるシーン
ダイナミックケイパビリティという言葉は、中期経営計画の説明資料や、経営戦略に関する研修、経済産業省関連の報告書などで使われます。人事の領域では、次世代経営人材の育成方針や、組織開発の方向性を検討する際の理論的な裏づけとして引用されることがあります。製造業をはじめとする事業環境の変化が大きい業界で、特によく使われる用語です。管理職向けの経営戦略研修において、変化対応力を養う視点として取り上げられることも増えています。
ダイナミックケイパビリティを理解することの重要性
人事担当者がダイナミックケイパビリティの考え方を理解しておく意義は、人材育成や組織開発の方向性を考えるうえでの指針が得られる点にあります。感知力を養うには、社外の情報に触れる機会や越境学習の場を設けることが有効です。捕捉力を養うには、部門を横断した意思決定やプロジェクト経験を積ませることが役立ちます。変容力を養うには、新しい取り組みを組織全体に浸透させるチェンジマネジメントの知識や経験が求められます。このように、抽象的な経営理論を具体的な人材育成施策に落とし込む際の枠組みとして活用できます。特に事業環境の変化が大きい業界では、こうした枠組みを人材要件の見直しに反映させることが、中長期的な組織競争力の維持につながると考えられています。