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はじめに
人はどのようなときに、やる気を高めて行動するのでしょうか。報酬があれば必ず意欲が湧くとは限らず、その背景には本人なりの見通しや判断が働いています。こうした動機づけの仕組みを説明する考え方のひとつが、期待理論です。努力と成果、そして報酬のつながりに着目し、人がなぜ特定の行動を選ぶのかを読み解く枠組みとして知られています。本記事では、期待理論の意味や用いられる場面、人事の実務で押さえておきたいポイントを整理してご紹介します。
期待理論とは?
期待理論とは、人の動機づけの強さが、行動の結果に対する期待と、その結果が持つ価値の組み合わせによって決まるとする考え方です。経営学者のビクター・ブルームによって提唱されたものがよく知られています。
この理論では、動機づけが主に三つの要素から成り立つと考えます。第一に、努力すれば成果を上げられるという見通しです。第二に、成果を上げれば報酬が得られるという見通しです。そして第三に、その報酬が本人にとってどれだけ魅力的か、という価値です。これら三つがいずれも高いときに、動機づけは強くなると説明されます。逆に、どれかひとつでも欠けていると、たとえほかの要素が満たされていても、意欲は高まりにくいとされます。たとえば、努力が成果に結びつくと思えなかったり、得られる報酬に魅力を感じられなかったりすると、行動への意欲はしぼんでしまいます。報酬の大きさそのものよりも、本人がどう見通し、どう価値を感じているかを重視する点に、この理論の特徴があります。
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期待理論がよく使われるシーン
期待理論は、従業員の意欲を高める仕組みを考える場面で用いられます。たとえば、目標管理の制度を設計するとき、評価と処遇のつながりを整理するとき、上司が部下の動機づけを支援するときなどです。
人事の実務では、努力・成果・報酬のつながりが、従業員から見て納得できるものになっているかという視点が役立ちます。いくら魅力的な報酬を用意しても、努力が成果に結びつくと感じられなかったり、成果が正しく評価されると思えなかったりすれば、意欲は高まりません。三つのつながりのどこに弱さがあるのかを見極めることで、動機づけを支える手がかりが得られます。たとえば、目標が高すぎて達成できる気がしないのであれば、努力と成果の見通しを支える工夫が必要になりますし、評価への不信があるのであれば、評価の基準や過程を明確にすることが手立てになります。
期待理論を理解することの重要性
期待理論を理解することは、人の意欲を多面的にとらえる助けになります。動機づけというと、報酬の大きさだけに目が向きがちですが、実際には本人の見通しや価値の感じ方が大きく関わっています。この点を踏まえると、画一的な施策ではなく、一人ひとりの受け止め方に目を向けた支援の必要性が見えてきます。
人事担当者にとっては、努力・成果・報酬という三つのつながりを切り分けて考える視点が重要です。意欲が低いように見える従業員がいても、その原因は努力への自信のなさにあるのか、評価への不信にあるのか、報酬への魅力の薄さにあるのかによって、とるべき対応は変わります。原因を取り違えると、せっかくの施策が空回りしかねません。一人ひとりの見通しや価値の感じ方に目を向けることが、効果的な動機づけにつながります。なお、報酬には給与のような外的なものだけでなく、達成感や成長の実感といった内的なものも含めて考えると、動機づけをより幅広くとらえることができます。
実務で活かすためのチェックポイント
✺ Editor’s Memo
現場での運用は、業界・規模・組織文化によって大きく変わります。記事内のインタビュー事例も併せて参考にしてください。
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