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退職金前払い制度

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退職金前払い制度とは、企業が従業員に支給する退職金の一部または全部を、退職時ではなく在職中の月例給与や賞与に上乗せして前倒し支給する仕組みです。「退職金分の原資を毎月の手取りに変えて受け取る」発想であり、従来型の退職一時金制度と並行して、もしくは選択型として導入されることが多い制度です。導入企業では、入社時または一定の節目に「退職一時金で受け取るか」「前払いで受け取るか」を本人が選択できる仕組みが採用される傾向にあります。なお、前払いとして受け取った金額は退職金ではなく給与として扱われるため、所得税・社会保険料の課税区分が退職一時金とは異なる点が大きな特徴です。

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退職金前払い制度とは?意味・使い方・実務での活かし方を解説

最終更新日: 2026-05-15 / カテゴリ: 報酬・労務 / 英語表記: retirement allowance prepayment system

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はじめに

終身雇用を前提とした退職金制度は、近年の人材流動化や働き方の多様化のなかで見直しを迫られています。その流れのなかで注目されているのが、退職時にまとまった額を支給するのではなく、在職中の給与に上乗せして支払う「退職金前払い制度」です。本記事では、退職金前払い制度の意味、活用シーン、運用上の留意点を、人事担当者の視点で整理します。

退職金前払い制度とは?

退職金前払い制度とは、企業が従業員に支給する退職金の一部または全部を、退職時ではなく在職中の月例給与や賞与に上乗せして前倒し支給する仕組みです。「退職金分の原資を毎月の手取りに変えて受け取る」発想であり、従来型の退職一時金制度と並行して、もしくは選択型として導入されることが多い制度です。導入企業では、入社時または一定の節目に「退職一時金で受け取るか」「前払いで受け取るか」を本人が選択できる仕組みが採用される傾向にあります。なお、前払いとして受け取った金額は退職金ではなく給与として扱われるため、所得税・社会保険料の課税区分が退職一時金とは異なる点が大きな特徴です。

退職金前払い制度がよく使われるシーン

退職金前払い制度は、主に以下のような様々なビジネスシーンで活用されます。

若手・中途人材の処遇設計*: 流動性の高い層に対し、長期勤続を前提としない処遇選択肢として導入されます。

採用ブランディング*: 「将来の退職金より今の手取りを重視したい」というニーズに応える施策として、採用力強化を狙って設計されます。

退職給付債務の抑制*: 企業会計上の退職給付債務を圧縮する手段として、人事制度刷新と組み合わせて活用されます。

確定拠出年金との併用*: 確定拠出年金・確定給付年金・前払いを組み合わせ、従業員に複数の選択肢を提供する制度として運用されます。

M&A・組織再編時の制度統合*: 統合後の退職金制度をシンプル化する手段としても採用が検討されます。

退職金前払い制度を理解することの重要性

退職金前払い制度を正しく理解することは、報酬戦略の幅を広げるうえで意味があります。

多様な人材ニーズへの対応*: 勤続年数より短中期のキャリアを重視する人材にも訴求できます。

退職給付債務の管理*: 企業会計上の退職給付債務を計画的に管理する手法として活用できます。

税・社会保険上の影響理解*: 退職一時金との税制上の差を把握しないと、従業員の不利益につながる可能性があります。

長期勤続インセンティブとのバランス*: 前払いの選択肢を提示することで、長期勤続を促す機能が弱まる側面も理解する必要があります。

実務で活かすためのチェックポイント

退職金前払い制度を自社で導入する際には、次のような観点で確認すると、運用の精度が高まります。

  1. 退職金制度全体(退職一時金、確定拠出年金、確定給付年金)の設計を整理し、前払いの位置づけを明確にする
  2. 選択型として導入する場合、本人による選択時期・変更可否・一度選択した後の取扱を就業規則と退職金規程に明記する
  3. 前払い金額の算出方法(退職金相当額の計算ロジック、月例給与への上乗せ率)を、世代間・職種間の公平性を踏まえて設計する
  4. 所得税・社会保険料・住民税の取扱いを従業員に丁寧に説明し、退職一時金との手取り差・税負担差を可視化する資料を整備する
  5. 長期勤続インセンティブの弱体化リスクを踏まえ、表彰制度・節目休暇・キャリア支援などの非金銭的施策を組み合わせる

よくある質問(FAQ)

Q. 退職金前払い制度は、従業員にとって有利な制度ですか?

A. 一概には言えず、個別の状況によって判断が分かれます。前払いを選択した場合、退職金として一括受け取りする場合に適用される退職所得控除(勤続年数に応じた大幅な控除)が使えず、月例給与として課税されるため、税負担が増えるケースが一般的です。また、社会保険料の算定対象にも含まれることから、手取りベースでは退職一時金と比べて目減りすることが多いとされています。一方で、若いうちの可処分所得を増やしたい、住宅ローンの返済原資を確保したい、長期勤続を前提としていないなどのニーズを持つ従業員にとっては、流動性の高い選択肢として一定の合理性があります。制度設計上は「税負担差を本人に正確に伝える」運用が極めて重要です。

Q. 退職金前払い制度を導入すれば、退職給付債務をすぐにゼロにできますか?

A. 一足飛びにはなりません。前払い制度に切り替えるのは、原則として制度移行後に発生する分の退職金相当額に対してであり、既存従業員がすでに積み上げてきた退職給付債務は基本的に残ります。既存従業員の退職金相当額を一括で前払いに変更する場合は、不利益変更にあたる可能性があるため、過半数労働組合または過半数代表者との合意、本人の同意取得など、慎重な手続きが必要となります。退職給付債務を計画的に圧縮するための長期的な制度設計と、移行期間の運用設計が、現実的な対応となります。

まとめ

退職金前払い制度は、退職時に支給される退職金の一部または全部を、在職中の給与に上乗せして前倒し支給する仕組みであり、人材の流動化や多様な処遇ニーズに対応する手法として注目されています。一方で、退職所得控除が使えないことによる税負担差、長期勤続インセンティブの弱体化、不利益変更リスクなど、設計と運用には複数の論点が存在します。退職金制度全体の中での位置づけを明確にし、従業員への情報提供と手続きを丁寧に進めることが重要です。

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