⌖ Detail
シェアドリーダーシップとは?意味・使い方・実務での活かし方を解説
最終更新日: 2026-05-15 / カテゴリ: マネジメント / 英語表記: Shared Leadership
---
はじめに
リーダーシップは特定の管理職や役職者だけが発揮するものではなく、チーム内のメンバーが状況に応じて発揮しあうものである。そんな考え方を整理した概念が、シェアドリーダーシップです。VUCA時代の複雑な課題に取り組むチームのあり方として、欧米の経営研究の領域から提唱され、日本でも近年、ジョブ型雇用やプロジェクト型組織の浸透とともに注目を集めています。本記事では、シェアドリーダーシップの意味、活用シーン、運用上の留意点を、人事担当者の視点で整理します。
シェアドリーダーシップとは?
シェアドリーダーシップ(Shared Leadership)とは、チーム内のリーダーシップ機能を、特定の正式リーダーが独占的に担うのではなく、メンバーが状況や課題に応じて相互に発揮し合う状態を指します。1990年代後半から2000年代にかけて、ピアース(Craig L. Pearce)とコンガー(Jay A. Conger)らが体系化した概念で、伝統的な「垂直型リーダーシップ(Vertical Leadership)」と対比される形で提示されました。シェアドリーダーシップが成立しているチームでは、戦略の見通しに長けるメンバーが戦略局面でリードし、対人調整に長けるメンバーが関係性の局面でリードし、技術的論点が浮上した場面では技術専門家がリードする、というように、リーダーシップの担い手が動的に入れ替わります。研究的にも、シェアドリーダーシップを発揮しているチームは、複雑性が高い課題や創造性を要する課題で高いパフォーマンスを示す傾向が報告されています。
シェアドリーダーシップがよく使われるシーン
シェアドリーダーシップは、主に以下のような様々なビジネスシーンで活用されます。
プロジェクト型組織*: 機能横断・短期集中型のプロジェクトで、専門性を持ち寄るメンバーが互いにリードし合う形態として活用されます。
アジャイル開発チーム*: スクラム・カンバンなどのアジャイル手法と親和性が高く、自己組織化チームの理論的支柱となります。
イノベーション創出*: 新規事業・R&D・新製品開発など、不確実性が高く創造性が求められる場面で活用されます。
フラット型組織の運営*: ティール組織・ホラクラシーなど、階層を抑制した組織形態の運営原理として参照されます。
マネジメント層の育成*: 一人のリーダーに依存しない組織づくりを通じて、将来のリーダー候補を広く育成する施策として活用されます。
シェアドリーダーシップを理解することの重要性
シェアドリーダーシップを正しく理解することは、組織のリーダーシップ観を更新するうえで意味があります。
リーダー依存からの脱却*: 単一リーダーへの依存リスクを下げ、組織のレジリエンスを高めます。
専門性の最大活用*: メンバーの多様な専門性をリーダーシップとして組織に取り込めます。
若手の成長機会拡大*: 役職に依存せず、リーダーシップを経験できる場が増えます。
複雑な課題への適応*: 不確実性が高く、一人では把握しきれない課題に対する組織的適応力が高まります。
実務で活かすためのチェックポイント
シェアドリーダーシップを自社の現場で活用する際には、次のような観点で確認すると、運用の精度が高まります。
- シェアドリーダーシップが機能する前提として、心理的安全性、相互信頼、明確な目標共有がチームに備わっているかを点検する
- 正式なリーダーは存在しないわけではなく、リーダーシップ機能を共有するための調整役を担うため、その役割と裁量を明確に再定義する
- メンバー一人ひとりが自身の専門性・強みを認識し、必要なタイミングでリードに踏み出せる自己効力感を育成する
- リーダーシップが分散することによる意思決定の遅延・責任所在の曖昧化を防ぐため、最終意思決定者と決裁プロセスを明確化する
- 人事評価・処遇制度において、リードした実績をジョブ・グレードや役職とは別軸で評価する仕組みを設計する
よくある質問(FAQ)
Q. シェアドリーダーシップでは、上司や管理職は不要になるのですか?
A. 不要になるわけではなく、役割が再定義されます。シェアドリーダーシップが機能する組織においても、正式なマネージャーや上司は存在し、その役割は「リーダーシップを独占して発揮する人」から「メンバー間でリーダーシップが発揮される土台を整える人」へと変わります。具体的には、目標の共有、心理的安全性の醸成、意思決定の枠組みの設計、最終的な責任の引き受け、外部との交渉、メンバーの育成支援といった役割が中核となります。シェアドリーダーシップは、ヒエラルキーを完全に否定する考え方ではなく、ヒエラルキー上の管理職とチーム内のリーダーシップ機能を区別したうえで、後者を分散させるアプローチとして理解することが重要です。
Q. シェアドリーダーシップは、どんなチームでも導入できますか?
A. すべてのチームに同じように適用できるわけではなく、課題の性質とチームの成熟度を踏まえた判断が必要です。シェアドリーダーシップが機能を発揮しやすいのは、(1)課題の不確実性が高く、一人では全体を把握しきれないチーム、(2)メンバー間に多様な専門性が存在し、補完関係が成立しているチーム、(3)心理的安全性と相互信頼が一定以上に確立しているチームです。一方、業務手順が定型化されており、明確な指示で動くことが効率的な業務、または、メンバー間の信頼関係がまだ構築されていない発足直後のチームでは、垂直型のリーダーシップが先に必要となるケースも多いとされています。チームの状況に応じて、垂直型とシェアド型のバランスを動的に調整する運用が、現実的なアプローチとなります。
まとめ
シェアドリーダーシップは、チーム内のリーダーシップ機能を、特定の正式リーダーが独占せず、メンバーが状況や課題に応じて相互に発揮し合う状態を指す概念です。複雑性や創造性を要する課題で高いパフォーマンスを発揮しやすいとされ、プロジェクト型組織・アジャイル開発・イノベーション創出などの場面で活用されます。心理的安全性・相互信頼・明確な目標共有という土台の整備と、正式マネージャーの役割再定義の両輪が、運用の鍵となります。
---
自社の人材育成・組織課題に関するご相談はこちら
人事用語を理解したうえで、「自社では実際にどう活用すればよいか」「制度や育成のしくみをどう設計すればよいか」というお悩みは、業種・規模を問わず多くの企業に共通します。
WONDERFUL GROWTHでは、人事領域の制度設計・人材育成・組織開発のご相談を、企業ごとの状況に合わせて承っております。シェアドリーダーシップの考え方を活かしたチーム運営やマネジメント刷新について、自社にどう取り入れるべきか整理したい方は、お気軽にお問い合わせください。
[ご相談・お問い合わせはこちら](https://wonderful-growth.com/contact)
> 課題整理の壁打ちから、リーダーシップ開発プログラムの設計、チームの心理的安全性向上の伴走まで、人事の現場に寄り添うご支援が可能です。まずは現状をお聞かせください。
---
関連情報
- カテゴリ: マネジメント
- 用語スラッグ: shared_leadership
- 想定URLパス: /shared-leadership
本記事は、人事担当者・経営者・現場マネージャーの皆さまが、ご自身の課題解決のヒントとして活用いただくことを目的に作成しています。実際の制度設計や法令対応にあたっては、専門家への確認をおすすめします。
✺ Editor’s Memo
現場での運用は、業界・規模・組織文化によって大きく変わります。記事内のインタビュー事例も併せて参考にしてください。
— SHARE with カイシャの育成論 編集部