傷病手当金とは?傷病手当金とは、従業員が業務外の病気やケガにより働けなくなった際に、健康保険から支給される生活補償のための給付金です。働けない期間中の収入減少を一定程度補う制度で、主に会社員や公務員など、健康保険に加入している被保険者が対象となります。なお、労災(仕事中や通勤中のケガなど)による休業は別の「労災保険」の対象となるため、傷病手当金の対象外です。傷病手当金が支給される条件傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。業務外の病気やケガで療養中であること ※労働災害は対象外です。仕事に就けない状態であること 医師の診断によって労務不能とされている必要があります。連続して3日間以上仕事を休んでいること(待機期間) 4日目以降から支給対象になります(最初の3日は無給期間)。給与の支払いがない、または支給されていても傷病手当金より少ないこと 給与が全額支払われている場合は対象外ですが、不足分がある場合はその差額が支給されます。支給される金額と期間金額の目安:1日あたりの支給額は、標準報酬日額の約3分の2 (例:標準報酬月額30万円 → 約6,600円/日が支給されることもあります)支給期間:最長で1年6カ月間 継続ではなく断続的な療養でも、初回の支給開始日から計算して1年6カ月が上限です。よく使われるシーン従業員がうつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調により長期休職する場合交通事故や私傷病で長期入院・療養が必要になったとき育成・管理職担当者が部下の休職に対応する際に、制度説明を行う場面人事部門が就業規則や休職制度と連動させて説明資料を作成する際傷病手当金と有給休暇・休職制度の違い制度名主な目的給与の有無健康保険との関係有給休暇労働者の権利としての休暇全額支給される傷病手当金と併用不可休職制度長期療養や復職準備のため会社規程による(無給が多い)条件を満たせば傷病手当金の対象傷病手当金生活保障健康保険から支給(給与とは別)健保に加入していれば受給可能人事担当者としての対応ポイント休職者の手続きをサポート:申請書の取得、医師の記入案内、会社の証明欄の対応など。制度の説明資料を整備:従業員が混乱しないよう、Q&Aや図解付きで案内すると効果的です。復職支援との連携:職場復帰時のリハビリ勤務制度や時短勤務制度と合わせて設計すると、離職防止につながります。注意点と留意事項扶養控除や社会保険料は通常どおり発生するため、給与がゼロでも支払いが必要になるケースがあります。任意継続被保険者(退職後の継続加入)は、傷病手当金の新規支給は受けられません(在職中に支給が始まっていれば継続支給可能)。自営業・フリーランスは対象外(国民健康保険には傷病手当金の制度がない場合が多い)。まとめ傷病手当金は、従業員が安心して療養に専念できるようにするための大切な制度です。企業側は、従業員の体調不良やメンタル不調による休職時に適切な案内と手続きをサポートすることで、従業員の安心感と信頼を高めることができます。人事担当者としては、制度の正確な理解とスムーズな対応体制の整備が求められます。