⌖ Detail
ソシオメトリーとは?集団の人間関係を可視化する分析手法を解説
はじめに
チームの雰囲気は悪くないはずなのに、特定のメンバーだけがどこか孤立しているように見える、あるいは特定の組み合わせでばかり業務が滞る。こうした集団内の心理的な構造は、公式な組織図だけでは見えてきません。集団のインフォーマルな人間関係を可視化するために、社会心理学の分野で古くから使われてきた分析手法がソシオメトリーです。
ソシオメトリーとは?
ソシオメトリーとは、精神科医のヤコブ・モレノが提唱した、集団内の人間関係を測定し可視化する分析手法です。メンバー同士の好意や反発、無関心といった心理的なつながりを質問紙や面接によって把握し、集団のインフォーマルな構造を明らかにします。
具体的には、メンバーに「一緒に仕事をしたい相手」や「相談しやすい相手」などを選んでもらうソシオメトリック・テストを実施し、その結果を図式化した「ソシオグラム」を作成する方法が代表的です。ソシオグラムを見ると、集団の中心的な存在は誰か、孤立している人はいないか、対立する派閥がないかといった構造を視覚的に把握できます。
組織開発の領域では、公式の組織図だけでは見えないチーム内の力学を把握し、配置転換やチームビルディングを検討する材料として活用されています。
近年では、この考え方を発展させた「組織ネットワーク分析(ONA)」が、社内のメール履歴やチャットのやり取りといったデジタルなコミュニケーションデータから、部署を横断した情報の流れや影響力の中心を可視化する手法として注目されています。モレノが紙と質問紙で行っていた分析を、テクノロジーの力でより大規模かつ継続的に実施できるようになった発展形といえます。ただし、いずれの手法も、ある時点の関係性を切り取ったスナップショットにすぎず、人間関係は時間とともに変化する点には留意が必要です。
広告
よく使われるシーン
新しいチームを編成する際、メンバー間の相性を事前に把握する目的で活用されます。組織サーベイの一環として、部署内の人間関係の偏りや孤立の兆候を把握する場面でも使われます。人材育成の研修で、参加者同士の関係性を可視化し、チームビルディングのワークにつなげる際にも用いられます。学級内の人間関係を把握する手法として、学校教育の分野でも古くから採用されています。近年ではピープルアナリティクスの一環として、社内コミュニケーションツールのログデータを用いた大規模な関係性分析に応用される例も出てきています。
ソシオメトリーを理解することの重要性
人事担当者がソシオメトリーの考え方を理解しておくことには、実務上の意義があります。第一に、離職やハラスメントの背景に人間関係の孤立が潜んでいないかを、公式の評価制度とは別の視点から把握できます。第二に、チーム編成や配置転換を検討する際、業務上のスキルだけでなく人間関係の相性も踏まえた判断ができます。第三に、組織図には表れない非公式なリーダーの存在に気づき、変革を推進する協力者として巻き込む発想につながります。第四に、分析はあくまで個人の内面を評価するものではなく集団の構造を理解するための手段であるという前提を持つことで、結果の誤用や過度な決めつけを避けられます。
✺ Editor’s Memo
現場での運用は、業界・規模・組織文化によって大きく変わります。記事内のインタビュー事例も併せて参考にしてください。
— SHARE with カイシャの育成論 編集部