⌖ Detail
はじめに
採用活動で一度接点を持った候補者のうち、実際に選考へ進んでもらえるのはごく一部というケースは少なくありません。面接を辞退した人材、内定を出せなかった優秀な人材、あるいは自社に興味を示しつつもタイミングが合わなかった人材との関係を、その場限りで終わらせてしまってはいないでしょうか。求人を出すたびに新しい候補者を一から探すのは、時間もコストもかかる非効率な採用活動といえます。売り手市場が続く採用環境では、一度きりの接触で終わらせず、中長期的に候補者との関係を育てていく発想が重要になっています。この記事では、そうした発想を体系化した「タレントリレーションシップマネジメント」について、定義から実務での活かし方まで解説します。
タレントリレーションシップマネジメントとは?
タレントリレーションシップマネジメント(Talent Relationship Management、略称TRM)とは、自社に興味を持つ候補者や過去に接点のあった人材との関係を、継続的かつ戦略的に構築・維持していく採用活動の手法です。営業やマーケティングの分野で顧客との関係を管理する「CRM(顧客関係管理)」の考え方を、採用領域に応用したものと位置づけられます。具体的には、候補者情報を一元管理するデータベースを整備し、選考に至らなかった人材や内定辞退者に対しても、メールマガジンやイベント招待などを通じて定期的に接点を持ち続けます。こうした活動により、将来的に自社に適したポジションが生まれた際、過去に接点のあった候補者へ迅速にアプローチできる状態を作ることを目指します。
よく使われるシーン
タレントリレーションシップマネジメントは、採用担当者が中途採用のパイプラインを構築する場面や、新卒採用でイベント参加者・エントリー者との関係を長期的に維持する場面で用いられます。採用管理システム(ATS)やCRM機能を備えた採用マーケティングツールの導入検討時に、その活用目的として語られることも多い用語です。また、専門性の高い職種やエンジニア職など、採用難易度の高いポジションの充足を目指すダイレクトリクルーティングの文脈でも頻繁に登場します。
タレントリレーションシップマネジメントを理解することの重要性
労働人口の減少が続く中、求人を出してから応募を待つだけの受け身の採用活動では、必要な人材を確保することが年々難しくなっています。タレントリレーションシップマネジメントの考え方を採り入れることで、採用のタイミングが合わなかった優秀な人材との縁を切らさず、将来の採用ニーズが生じた際の候補者プールとして活用できるようになります。結果として、求人広告費や紹介手数料といった採用コストの抑制にもつながり、中長期的な採用力の強化に寄与します。また、候補者にとっても、選考結果にかかわらず自社から丁寧な対応を受けた経験は、企業に対する好意的な印象として残ります。こうした印象は、候補者本人の再応募だけでなく、知人への紹介や口コミといった形で採用力に波及することも期待できます。人事担当者にとって、単発の採用活動から関係構築型の採用活動へと発想を転換する際の重要な考え方です。