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研修転移とは?学びを現場の行動変化につなげる考え方を解説
はじめに
企業が研修プログラムに多くの予算と時間を投じても、受講後に現場の行動や成果が変わらないという悩みは、人材育成担当者にとって共通の課題です。研修で学んだ知識やスキルが職場での実践に結びつかなければ、投資の意味は限定的になってしまいます。学んだ内容を実務での行動変化へとつなげる過程を捉えた概念が「研修転移」です。この用語を理解しておくことは、研修設計そのものを見直すうえで役立ちます。本記事では、研修転移の意味や内容、実務に活かすための視点をわかりやすく解説します。
研修転移とは?
研修転移とは、研修で学んだ知識・スキル・態度を、受講者が職場の実務で活用し、行動の変化と成果に結びつける一連のプロセスを指します。英語ではTraining Transferと表記され、学習科学の領域で研究が積み重ねられてきました。教育学者のティモシー・ボールドウィンとケビン・フォードが1988年に発表した「転移のプロセスモデル」は、この分野の古典的な枠組みとして知られています。
転移には、学習場面と類似した実務に応用する「近接転移」と、学習場面とは異なる実務に応用する「遠隔転移」の二種類があるとされます。また、転移を阻害する要因は、研修の設計そのもの、受講者の特性、職場の環境、上司や同僚の関わり方など多岐にわたるとされ、単一の原因に帰結しない点が特徴です。
研修転移がよく使われるシーン
研修転移は、研修効果測定の場面でよく登場します。特に、カークパトリックの四段階評価モデルにおける「レベル3:行動」の評価は、研修転移そのものを測定する試みといえます。研修のROIを議論する場面や、研修体系全体を再設計する場面でも参照される概念です。
加えて、フォローアップ研修の設計、研修転移を促すための上司面談の運用、研修後の行動目標設定、転移を阻害する職場要因の特定など、研修が終わった後の実装フェーズに焦点を当てる議論の中心に位置づけられます。人材育成部門が研修の効果を経営層に説明する際の共通言語としても用いられます。
研修転移を理解することの重要性
研修転移率は、業種や研修内容を問わず10〜30%程度にとどまるという研究知見があり、研修投資の大部分が現場での実践につながっていない可能性が指摘されています。人的資本経営の観点から研修投資の妥当性を説明する必要性が高まる中、研修転移を可視化し改善する取り組みは欠かせません。
また、研修転移を阻害する要因は、受講者個人の意欲不足だけに起因するのではなく、上司の関わり方、職場の心理的安全性、業務の多忙さ、評価制度との不整合といった職場側の構造的な要因に起因することが少なくありません。研修部門だけの努力では転移は実現せず、現場の管理職や経営層との協働が前提になるという理解が重要です。
実務で活かすためのチェックポイント
- 転移を意識した研修を設計する:研修設計の段階で、現場でどのような行動変化を目指すのかを明確にします。知識の習得だけを目的とした設計は、転移率を構造的に下げてしまいます。
- 上司に研修前後で関わってもらう:受講者の上司が、研修前に期待を伝え、研修後に振り返りの対話を行う仕組みを設けます。上司の関与の有無が、転移率を大きく左右します。
- アクションプランを運用する:研修終了時に現場での行動計画を立て、一定期間後にフォローアップする仕組みを整えます。計画と実行を往復させる構造が転移を後押しします。
- 職場環境を整備する:学んだスキルを試せる業務機会や、失敗を許容する心理的安全性が職場に整っているかを点検します。環境要因の診断が、転移を阻害する障壁の発見につながります。
- 効果を測定し改善につなげる:研修後数か月の時点で受講者の行動変化を測定し、研修設計や運用の改善に反映します。測定を怠ると、改善の手がかりが得られません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 研修転移とはどのような概念ですか。
A. 研修で学んだ知識やスキルを、受講者が職場の実務で活用し、行動の変化と成果に結びつける一連のプロセスを指す概念です。
Q2. 近接転移と遠隔転移とは何ですか。
A. 近接転移は学習場面と類似した業務への応用、遠隔転移は学習場面とは異なる業務への応用を指します。両者を区別して研修設計を考えることが有効です。
Q3. 研修転移率はどの程度が一般的ですか。
A. 研究知見では、業種や研修内容を問わず10〜30%程度にとどまるとされ、多くの研修投資が現場実践につながっていない実態が指摘されています。
Q4. 誰が提唱した概念ですか。
A. 教育学者のティモシー・ボールドウィンとケビン・フォードが1988年に発表した「転移のプロセスモデル」が、古典的な枠組みとして知られています。
Q5. 研修転移を高めるために現場ができることは何ですか。
A. 上司が研修前後に受講者と対話し、行動計画の実行を継続的に後押しすることが、転移を高める有効な手段とされています。
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