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衰退する企業に共通する7つの兆候——倒産1万件超の時代に、人事と経営層が見直したい組織課題

帝国データバンクの集計によると、2025年の企業倒産件数は1万261件にのぼり、4年連続で前年を上回りました。年間1万件超の倒産は2013年以来12年ぶりです。とりわけ「人手不足倒産」は427件と、調査開始以来初めて400件を超え、過去最多を大幅に更新しています。

公開日
2026/05/25
更新日
2026/05/25
読了時間
11
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
組織開発衰退兆候人的資本経営

想定読者:人事担当者・経営層 / カテゴリ:組織開発 / 公開日:2026年5月25日

「うちはまだ大丈夫」と言える根拠は、本当にありますか

帝国データバンクの集計によると、2025年の企業倒産件数は1万261件にのぼり、4年連続で前年を上回りました。年間1万件超の倒産は2013年以来12年ぶりです。とりわけ「人手不足倒産」は427件と、調査開始以来初めて400件を超え、過去最多を大幅に更新しています。「物価高倒産」も949件と過去最多に達し、業績そのものよりも先に、人材と原価の構造に耐えられず限界を迎える企業が急増しています。

出典:帝国データバンク「倒産集計 2025年報(1月~12月)」

この数字を見て、「うちはまだ大丈夫」と即答できる企業は、おそらくそれほど多くないはずです。倒産までいかなくとも、後継者が決まらない、若手が定着しない、現場の生産性が伸びない、といった「衰退の予兆」は、業績の悪化に先立って組織のなかに静かに溜まっていきます。本記事では、人事担当者と経営層に向けて、衰退していく企業に共通して見られる7つの兆候と、その兆候を反転させるための実践ステップを、公的調査と組織研究の知見を踏まえて整理します。

なぜ今、「衰退する企業」を語る必要があるのか

倒産企業の平均寿命は23.2年──「老舗」だから安泰、ではない

東京商工リサーチの調査では、2024年に倒産した企業の平均寿命は23.2年でした。さらに、業歴30年以上の「老舗」企業の倒産が全体の32.2%を占め、業歴100年以上の倒産は前年の2社から6社へ3倍に増えています。社歴の長さは、もはや安心材料にはなりません。むしろ、過去の成功体験と現在の事業環境とのずれが、衰退の起点になっていることを示唆しています。

出典:東京商工リサーチ「倒産企業の平均寿命調査」

労働生産性はG7最下位、後継者不在率は中小51.2%

日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2024」によれば、日本の一人当たり労働生産性は98,344ドルでOECD加盟38カ国中29位、時間当たりは60.1ドルで28位となり、いずれもG7では最下位の水準にあります。あわせて、帝国データバンクの「全国後継者不在率動向調査(2025年)」では、後継者不在率は全体で50.1%、中小企業では51.2%、小規模企業では57.3%に達しています。

出典:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2024」/帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2025年)」

つまり、現在の日本企業は、「事業を回す人」と「事業を継ぐ人」の両方が同時に不足している構造にあります。この構造を放置したまま売上目標や採用計画だけを積み上げても、組織は静かに摩耗していきます。衰退の兆候は、決算書よりも先に、組織のなかで起こります。

衰退していく企業に共通する7つの兆候

ここからは、人事と経営の現場で観察される「衰退の予兆」を7つに整理します。自社に当てはまるものがないか、各項目末尾の実施チェックを使って点検してみてください。

兆候1 経営戦略と人材戦略が連動していない

経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」は、人的資本経営の核として「経営戦略と人材戦略の連動」を挙げています。しかし実際には、中期経営計画は経営企画部、人材計画は人事部で個別に策定され、両者が同じ言葉で語られないまま運用されている企業が少なくありません。事業ポートフォリオが変わるのに、人材ポートフォリオは変わらない──このずれが、業績鈍化の半歩手前で必ず生じます。

出典:経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」(2022年)

実施チェック:中期経営計画に対応した「3年後に必要な人材像とその数」を、人事と経営で共有できているか。

兆候2 後継者・次世代リーダーが育っていない

帝国データバンクの調査によれば、2025年の後継者不在率は全体50.1%、中小企業51.2%、小規模企業57.3%にのぼります。さらに、後継者倒産は503件と高水準で推移しています。後継者問題は事業承継だけの話ではありません。部長・課長クラスの後任が育っていないこと、現場のリーダーが慢性的に「兼任」で回されていることも、同根の兆候です。

出典:帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2025年)」/「倒産集計 2025年報」

実施チェック:5年以内に交代が見込まれる主要ポストごとに、後任候補と育成計画が文書化されているか。

兆候3 「採れない」を採用力ではなく市場のせいにしている

人手不足倒産が初めて400件を超えた現在、「市場が厳しい」のは事実です。しかし、市場環境を理由に採用要件を曖昧にしたまま母集団形成にコストを投じ続けると、結果として「採っても辞める」「採っても活きない」状態が固定化していきます。採用要件の解像度、現場マネージャーの面接スキル、オンボーディングの設計など、自社側で改善できる変数を可視化していない場合、衰退の足音は速まります。

出典:帝国データバンク「倒産集計 2025年報」

実施チェック:過去1年の採用について、入社後1年定着率と早期離職理由を、ポジション別に整理できているか。

兆候4 離職を「ノイズ」として処理してしまっている

厚生労働省「令和6年雇用動向調査」では、2024年の離職率は14.2%、入職率は14.8%でした。とくに「宿泊業・飲食サービス業」の離職率は25.1%、「生活関連サービス業・娯楽業」は19.0%と高水準で、入職超過率も0.6ポイントまで低下しています。衰退している企業ほど、退職面談を形式的に流し、離職データを毎月の数字としてしか扱いません。退職理由のなかにある「言えなかった不満」を引き出し、構造的な改善に接続できているかが、踏みとどまれる組織との分水嶺です。

出典:厚生労働省「令和6年(2024年)雇用動向調査結果の概況」

実施チェック:直近1年の退職者の「真の退職理由」が、上司を介さない経路で経営層まで届く仕組みがあるか。

兆候5 学習・リスキリングが現場任せになっている

経済産業省の人的資本経営に関する諸資料は、人材への投資を「コスト」ではなく「投資」として捉え直すことを繰り返し提言しています。厚生労働省の「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」では、中小企業の場合、訓練経費の最大75%、賃金助成は1時間あたり1,000円(2025年4月以降)が支給されますが、こうした制度を活用しないまま、学習の機会を現場の自助努力に委ねている企業は、人材の陳腐化を防げません。

出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」/経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」

実施チェック:年間の研修・学習投資額と、その投資が事業KPIにどう貢献したかを説明できる状態か。

兆候6 心理的安全性が低く、悪い報告が経営に届かない

ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱し、Google社のプロジェクト・アリストテレスでも、「効果的なチームを成立させる最重要因子」として実証されたのが心理的安全性です。心理的安全性の低い組織では、現場で起きている品質のほころびや顧客のクレーム、若手の離職予兆といった「悪い報告」が経営層に届かず、気づいたときには手遅れになります。衰退する企業ほど、会議は静かで、役員報告は綺麗です。

出典:Edmondson, A. (1999), Google re:Work「Project Aristotle」

実施チェック:過去半年で、現場から経営に対して「ネガティブだが重要な情報」が報告された事例を3件以上挙げられるか。

兆候7 人的資本の見える化と開示が進んでいない

2023年3月期決算以降、有価証券報告書を提出する大手企業を中心に、人的資本に関する情報開示が求められるようになりました。直接の開示義務がない中小企業であっても、取引先や金融機関、求職者は「人材戦略の透明性」を比較指標として見るようになっています。人的資本の状態を数値で示せない組織は、評価される機会そのものを失います。

出典:経済産業省「人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組」(2024年12月)

実施チェック:自社の人的資本(人員構成、研修投資、エンゲージメント、離職率など)を、外部に説明できる形で整理できているか。

兆候を反転させる5つの実践ステップ

ここまでの7つの兆候は、いずれも個別の施策で解決するものではありません。ただし、起点となる打ち手は明確に整理できます。以下の5ステップは、規模や業種を問わず、人事と経営層が共同で進めるための最小単位として設計しています。

ステップ1 経営課題を起点に人材ポートフォリオを再設計する

中期経営計画で目指す事業構成に対し、「3年後・5年後に必要となる職種、スキル、人数」を逆算で書き出します。現状とのギャップが、採用・育成・配置の優先順位を決める出発点になります。

実施チェック:中期計画と人材ポートフォリオの突合表を、人事と経営企画が同じシートで管理しているか。

ステップ2 後継者・次世代リーダーの育成計画を1年単位で運用する

主要ポストごとに、候補者・必要経験・想定異動時期・伴走者を明記したサクセッションプランを、年1回ではなく四半期単位で更新します。後継者育成は「ハイポテンシャル発掘」よりも「日常業務を通じた意思決定の機会設計」が成果を左右します。

実施チェック:候補者本人と直属上司の双方が、育成計画と評価基準を口頭で説明できる状態か。

ステップ3 採用ペルソナとオンボーディングを連動させる

採用要件を「経歴」ではなく「入社後90日で再現してほしい行動」で記述し、その行動をオンボーディングで実際に試す機会を設けます。母集団形成のコストを下げるよりも、入社後1年定着率を3〜5ポイント引き上げる方が、長期的な採用費用対効果は高くなります。

実施チェック:入社後90日のチェックポイントが、採用要件と1対1で対応しているか。

ステップ4 離職データを「対話可能な指標」に変換する

退職理由は、自由記述のままでは経営判断に使えません。退職面談の質問項目を、「上司との関係」「業務内容」「成長機会」「処遇」「組織風土」のように分類し、半年ごとに集計します。匿名化された結果は、必ず経営会議で議題化してください。

実施チェック:過去2年の退職理由のうち、改善施策に紐づいた項目が3件以上特定されているか。

ステップ5 学習基盤の整備とROIの測定

人材開発支援助成金などの制度を活用しながら、年間の学習計画を職種別に設計します。重要なのは、研修後の行動変容を「上司の観察」と「業務指標」の両面で測定する仕組みです。学習投資が事業KPIに接続されてはじめて、人材育成は「コスト」から「投資」になります。

実施チェック:年度末に、研修ごとの効果を「行動指標」「業務指標」「定着指標」の3軸で振り返れる体制があるか。

衰退を止めるために避けたい3つのアンチパターン

アンチパターン

起こりがちな現象

代わりに取るべき行動

施策の単発化

研修・1on1・サーベイなど、流行の打ち手を個別に導入して終わる

経営課題を起点に、3年間のロードマップに位置づけ直す

数値の独り歩き

離職率・エンゲージメントスコアを下げること自体が目的化する

数値の背景にある退職理由・行動を、四半期ごとに対話で確認する

外注への丸投げ

研修やコンサルに任せ切り、社内に知見が蓄積しない

外部知見はテンプレートではなく「議論の触媒」として位置づける

まとめ──衰退の予兆を読み解き、組織の現在地を点検する

2025年の倒産1万件超、人手不足倒産の過去最多更新、後継者不在率の高止まり、労働生産性のG7最下位──これらは、特定の業界だけの話ではなく、日本企業全体に通底する構造的な信号です。衰退する企業は、ある日突然衰退するのではなく、7つの兆候を見過ごし続けた結果として、決算書に異変が現れます。

逆に言えば、兆候の段階で組織を点検し、経営戦略と人材戦略を連動させることができれば、たとえ業歴が長い企業であっても、再び成長軌道に乗せ直すことは十分に可能です。重要なのは、「うちはまだ大丈夫」と決めつけるのではなく、自社の現在地を、定量と定性の両面から定期的に棚卸しすることです。

組織開発・人材育成のご相談(無料) 本記事で取り上げた7つの兆候について、自社の状況を専門家とともに点検したい方は、WONDERFUL GROWTHの無料相談をご利用ください。経営戦略と人材戦略の連動、後継者・次世代リーダー育成、心理的安全性の高い組織づくりまで、貴社の現在地に合わせた打ち手をご一緒に整理いたします。 資料請求・無料相談はこちら:

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本記事の主な引用元

帝国データバンク「倒産集計 2025年報(1月~12月)」(2026年1月13日)

帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2025年)」(2025年11月)

東京商工リサーチ「2024年 倒産企業の平均寿命調査」

厚生労働省「令和6年(2024年)雇用動向調査結果の概況」

日本生産性本部「労働生産性の国際比較2024」

経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」(2022年5月)

経済産業省「人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組」(2024年12月)

厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」(2025年度版)

Edmondson, A.(1999)/Google re:Work「Project Aristotle」

運営:株式会社ワンダフルグロース

組織開発・人材育成のご相談はこちら:https://wonderful-growth.com/contact

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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