リクルートワークス研究所が2019年3月に行った調査では、部下を持つ課長相当の管理職2,183人のうち、部下と同様の業務を行っていない人は12.7%でした。残りの87.3%はプレイングマネジャーで、その業務に5割以上の時間を割く人も約3割います。同じ調査で、チーム成果の平均が最も高かったのは、プレイング業務が2割以上3割未満の管理職でした。部下を育てる時間は、管理職の心がけに任せず、プレイング業務の比率と中身を、人員配置と目標の設計で整えることで生まれるというのが、WONDERFUL GROWTH の見方です。
プレイングマネジャーは87.3%、時間の5割以上を割く人も約3割
リクルートワークス研究所の「マネジメント行動に関する調査」は、従業員100人以上の企業に勤務し、一次考課の対象となる部下がいる課長相当の管理職(正規の職員・従業員)に、2019年3月のインターネット調査で行われました。有効回答は2,183人です。報告書は、プレイング業務を「部下が担う業務と同様の業務」と表現しています。
プレイング業務に割く時間の割合は、次のように分かれています。
プレイング業務に割く時間の割合 | 管理職の比率 |
|---|---|
行っていない | 12.7% |
20%未満 | 19.3% |
20〜30% | 13.1% |
30〜40% | 12.4% |
40〜50% | 11.5% |
50〜60% | 11.0% |
60〜70% | 8.2% |
70〜80% | 5.2% |
80%以上 | 6.6% |
プレイング業務を行っていない人は12.7%にとどまり、報告書は「マネジャーの約9割がプレイングマネジャーである」としています。割く時間が5割以上の管理職は、全体の約3割です。
産業能率大学総合研究所が2019年に発表した「第5回上場企業の課長に関する実態調査」(従業員100人以上の上場企業に勤務し、部下が1人以上いる課長714人)でも、ほとんどの課長がプレイングマネジャーとして業務を遂行しており、そのうちの約6割が「プレイヤーとしての活動がマネジメント業務に支障がある」と回答しています。どちらの調査も2019年3月の実施で、時間がたっています。自社の課長の状況は、自社で確かめる必要があります。
チーム成果が最も高いのは、プレイング業務が2割以上3割未満の管理職
報告書は、プレイング業務の割合とチーム成果の関係も分析しています。チーム成果は、管理職が管轄するチームの業績や生産性、部下の成長の程度などを問う15の設問への回答を統合した指標で、最低値は1、最高値は5です。管理職本人の回答にもとづく指標であり、部下の成長の程度も含まれています。
プレイング業務に割く時間の割合 | チーム成果の平均値(5段階) |
|---|---|
行っていない | 3.08 |
20%未満 | 3.24 |
20〜30% | 3.27 |
30〜40% | 3.22 |
40〜50% | 3.14 |
50〜60% | 3.18 |
60〜70% | 3.01 |
70〜80% | 3.09 |
80%以上 | 2.86 |
平均値が最も高いのは、20〜30%の3.27です。80%以上では2.86まで下がります。報告書は、プレイング業務の割合が高まるほど、基本的にはチーム成果が低下するとしています。マネジメント業務の実施状況についても、プレイング業務の比率が30%以上になると急速に低下していることが分かり、30%未満と30%以上の差は統計的に有意でした。報告書は、チーム成果を高くするためのプレイング業務比率の目安を30%とし、30%未満に抑えることを提言しています。
数値には、読むときの注意が二つあります。一つは、プレイング業務を行っていない管理職の3.08が、20%未満の3.24より低いことです。現場の仕事から完全に離れることが答えとは限らず、プレイング業務を残しながら比率を抑えるほうが、成果が高い管理職が多かったということです。もう一つは、この調査が一度のアンケートであることです。プレイング業務を減らせばチーム成果が上がると証明したものではありません。
手放す対象は、進め方が決まっている基本レベルの業務
報告書は、プレイング業務を難しさで3段階に分け、チーム成果との関係を調べています。
段階 | 含まれる業務 | チーム成果への効果 |
|---|---|---|
基本レベル | 進め方が完全に決まっている業務、自分1人で完結する業務、新人から3年目くらいまでの職務経験が浅い社員でもできる業務 | マイナス |
改善レベル | マネジャーにしか遂行できないレベルの業務、やり方や進め方をゼロから考えるような業務、他部署・社外の関係者と協働が必要な業務 | プラス |
変革レベル | これまでとは全く異なるやり方や進め方が求められる業務、上司との協働が必要な業務 | プラス |
報告書は、基本レベル業務はチームの成果に対してマイナスの効果があり、改善レベルと変革レベルの業務はプラスの効果があるとしています。基本レベルの業務は、わざわざプレイヤーとして実施する必要はないという見方です。管理職が手放すのは、プレイング業務の全部ではありません。部下にも任せられる、進め方の決まった業務から手放し、自分にしかできない業務は残します。
報告書は、プレイングマネジャーが「戦略的にプレイング業務をデザインし、実行することによって、チームの成長を加速させるべきである」と述べています。プレイングを減らす量だけでなく、何を残すかが問われています。
図解01
手放す
プレイング
30%以上
マネジメント
プレイング
30%以上マネジメント
- 1基本
レベルの 業務は 手放す進め方が 完全に 決まっている 業務、 自分1人で 完結する 業務 - 2改善・
変革 レベルの 業務を 残すマネジャーにしか 遂行できない レベルの 業務 - 3人員配置と
目標設計を 見直すより 上位職の 人や 人事が、その チームの 人員配置や 目標設計を 見直す
基本レベルの業務を管理職が抱えるときは、チームの編成を見直す
管理職が基本レベルの業務を担わざるを得ない状況について、報告書は「チーム編成が失敗している可能性が高い」と指摘しています。そのうえで、より上位職の人や人事が、そのチームの人員配置や目標設計を見直すべきだとしています。
「人が足りないから、自分がやるしかない」という声は、現場でよく聞かれます。報告書の答えは、個人の頑張りの問題として扱わず、人員配置と目標設計の問題として扱うことです。管理職が進め方の決まった業務を抱え続けると、部下に任せる機会も、教える時間も、後回しになりやすいと考えられます。産業能率大学総合研究所の調査で、約6割の課長がプレイヤーとしての活動をマネジメント業務の支障と答えていることも、同じ方向を指しています。
育成の時間は、配置と目標の設計で先に確保する
部下を育てる時間を、管理職の工夫だけで生み出すのは難しい状況があります。人事と上位職が、次の順で現状を確かめるところから始められます。
- 課長ごとに、部下と同様の業務へ割いている時間の割合を聞き取る。報告書の区分(20%未満、20〜30%など)にそろえると、調査の結果と見比べられます。
- 割いている業務を、基本レベル、改善レベル、変革レベルに仕分ける。基本レベルの業務が多い課長のチームから、人員配置の見直しを検討します。
- 管理職の目標に、部下の育成に充てる時間と、部下の成長の状況を入れる。育成の時間を、仕事の余りではなく、目標に書かれた仕事にします。
- 基本レベルの業務を部下へ渡すときは、渡す業務、渡す時期、見届ける人まで決める。渡しただけで終えると、管理職の手元にまた戻ってきます。
見直しが進んだかどうかは、課長ごとのプレイング業務の割合と、改善・変革レベルの業務に使う時間の変化で見えてきます。3割という値は2019年の調査の結果であり、事業や職場の性質によって適切な比率は変わります。まず自社の現状を測り、報告書の区分と見比べてください。
まとめ
課長相当の管理職の87.3%はプレイングマネジャーで、チーム成果の平均が最も高かったのは、プレイング業務が20〜30%の管理職でした。手放す対象は、進め方が決まっている基本レベルの業務です。基本レベルの業務を管理職が抱えているなら、人事と上位職が人員配置と目標設計を見直すことが、部下を育てる時間をつくる最初の一歩です。
出典:リクルートワークス研究所「プレイングマネジャーの時代」(2020年1月発行。「マネジメント行動に関する調査」、2019年3月実施。2026年10月9日に確認)リクルートワークス研究所の報告書(PDF)/産業能率大学総合研究所「第5回上場企業の課長に関する実態調査」(2019年9月4日発表。2026年10月9日に確認)産業能率大学総合研究所の発表資料
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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