人手不足の切り札のはずが、活用は1割に届かない
人手不足が深刻化する中、副業・兼業人材やスポットワーク人材といった「多様な人材」を受け入れる動きが注目されています。しかし中小企業庁が2026年4月に公表した「2026年版中小企業白書」によると、副業・兼業人材を現在活用している中小企業は全体で7.0%にとどまります。過去に活用した経験がある企業を含めても11.0%で、9割近くの中小企業が外部人材の受け入れにまだ踏み出せていない実態が明らかになりました。
副業・兼業人材を「現在活用している」中小企業は7.0%で、活用経験ありを含めても11.0%にとどまります(出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書」2026年4月公表)。
短時間・単発の業務を担うスポットワーク人材についても、現在活用している企業は6.1%(経験ありを含め11.9%)にとどまります。一方で業種別に見ると、宿泊業・飲食サービス業では副業・兼業人材の活用が約3割、スポットワーク人材の活用が半数近くに達しており、業種によって活用の進み方に大きな差が生まれています。
「効果」は実感されているのに、なぜ広がらないのか
白書は、副業・兼業人材を実際に活用した事業者にその効果を尋ねています。最も多かった回答は「人手不足や業務負担の軽減」で57.0%、次いで「社外の技術や知識の獲得」20.3%、「従業員のスキルアップ」14.2%と続きます。人手不足を補うだけでなく、社内にない専門知識を取り込む手段としても機能している様子がうかがえます。
それにもかかわらず活用が広がらない背景には、明確な壁があります。活用していない企業にその理由を尋ねた結果、最も多かったのは「活用のイメージが浮かばない」36.2%、次いで「人材のスキル・品質への不安がある」35.1%、「受け入れる社内体制が整備されていない」33.2%でした。つまり課題は人材市場の側ではなく、受け入れる企業側の「設計」の有無にあります。ここでは、この三つの壁に対応する設計を、実施チェックとともに整理します。
外部人材を戦力化する三つの設計
設計1:業務の切り出し設計――「独立して完結する単位」に分解する
「活用のイメージが浮かばない」という壁の多くは、自社の業務のどこを外部人材に任せられるか言語化できていないことに起因します。まず社内の業務を洗い出し、期限と成果物が明確で、他部署との調整が少ない業務から切り出します。白書は多能工化・兼務化についても分析しており、有効だった取り組みとして「従業員スキルの可視化」41.3%や「業務マニュアルの作成・整備」34.2%を挙げる企業が多いことを明らかにしています。社内の業務を見える化し、言語化してから人材の配置を見直すという発想は、外部人材の受け入れにもそのまま応用できます。
実施チェック
- 依頼したい業務が、他業務から独立して完結できる単位に分解されているか
- 業務の進め方や判断基準が、担当者以外にも分かるかたちで文書化されているか
- 雇用契約・業務委託契約のいずれで受け入れるか、労働時間の通算要否を含めて事前に整理したか
設計2:見極めと契約の設計――小さく試し、契約前に合意する
「人材のスキル・品質への不安」を理由に踏み出せない企業は少なくありません。この不安から受け入れを断念してしまわないためには、最初から重要な業務を任せるのではなく、期間と範囲を限定した小規模な業務から始め、双方が見極める機会を設けることが有効です。募集の段階で求めるスキルや実績の水準を具体的に示すことも、ミスマッチを防ぐうえで欠かせません。
実施チェック
- 初回の依頼は、期間や成果物の範囲を限定した小規模な業務にしているか
- 募集時に、求めるスキル・実績・経験年数などを具体的に明示しているか
- 進捗確認の頻度・方法・連絡窓口を、契約前に双方で合意しているか
設計3:受け入れ体制の設計――窓口と社内浸透、知見の還元
「受け入れる社内体制が整備されていない」という壁は、外部人材本人ではなく、既存の従業員側の準備不足から生まれます。誰が窓口となり、どの情報やツールを共有し、どこまでの裁量を委ねるのかを事前に決めておかなければ、現場の混乱や既存社員の戸惑いにつながります。あわせて、なぜ外部人材を受け入れるのか、既存社員にどのような役割分担を求めるのかを事前に説明し、理解を得ておくことも欠かせません。契約終了後もノウハウが社内に残るよう、成果物や知見を還元する仕組みを組み込むことで、受け入れの効果を一過性で終わらせずに済みます。
実施チェック
- 社内の受け入れ窓口・責任者が明確になっているか
- 受け入れの目的と役割分担を、既存の従業員にあらかじめ説明しているか
- 得られた知見や成果物を社内に還元し、蓄積する仕組みを用意しているか
まとめ:受け入れの「仕組み」が人手不足対策の質を分ける
副業・兼業人材やスポットワーク人材の活用は、正社員採用だけに頼らない人材確保の選択肢として、今後さらに重要性を増していきます。しかし白書のデータが示すとおり、課題は人材市場の側ではなく、受け入れる企業側の設計にあります。業務の切り出し、見極めと契約、受け入れ体制という三つの設計を整えることが、外部人材を一時的な人手の補充にとどめず、継続的な戦力に変える分かれ目になります。
自社の受け入れ体制の整備や、多能工化・スキル可視化を含めた人材活用の仕組みづくりでお悩みの際は、研修・組織開発の専門家にご相談ください。こちらから資料請求・お問い合わせいただけます。
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
Next step
記事の内容を、自社に当てはめてみませんか。
Growth Survey は、心理的安全性・エンゲージメント・行動変容を定量化し、組織の現在地を可視化するサーベイです。 まずは3分診断で、おおよその現在地をつかむこともできます。