厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」(2025年6月分の賃金が対象)によると、大学卒の新規学卒者の賃金は26万2,300円で、前年から5.6%増えました。調査の名称は「新規学卒者の賃金」で、一般に初任給と呼ばれる額にあたります。初任給の引き上げは採用の場面で語られることが多い話題ですが、人事制度の面では、入社2年目以降の賃金をどう動かすかまで決めて初めて形になります。初任給の額を決める会議で、入社数年目の賃金表を同時に設計することを提言します。
大学卒の初任給は26万2,300円、前年比5.6%増
厚生労働省の調査は、日本全国の16大産業から無作為に抽出した事業所を対象に、2025年7月に実施されました。10人以上の常用労働者を雇う民営事業所52,242事業所の結果を集計しています。新規学卒者の賃金は、男女計で次のとおりです。
学歴 | 賃金 | 前年比 |
|---|---|---|
大学院 | 29万9,000円 | 4.0%増 |
大学 | 26万2,300円 | 5.6%増 |
高専・短大 | 23万5,500円 | 5.2%増 |
専門学校 | 23万700円 | 3.5%増 |
高校 | 20万7,300円 | 5.0%増 |
民間の調査でも、引き上げの動きは続いています。産労総合研究所の「2026年度 決定初任給調査」(2026年4月から5月に実施、294社が回答)では、初任給を引き上げた企業が77.9%で、調査開始以来で最も高い割合でした。労務行政研究所の「2026年度 新入社員の初任給調査」(東証プライム上場企業205社の回答を集計、2026年4月30日公表)では、大学卒(一律設定)が26万5,708円で、前年度から5.3%上がり、全学歴を引き上げた企業は75.6%でした。調査ごとに対象の企業が違うため、水準や割合は一致しません。
賃上げは20代から30代前半に集まっている
同じ厚生労働省の調査で、一般労働者の年齢階級別の賃金を見ると、前年からの伸びは年齢によって違います。
年齢階級 | 賃金 | 前年比 |
|---|---|---|
20〜24歳 | 24万2,800円 | 4.4%増 |
25〜29歳 | 27万9,400円 | 4.6%増 |
30〜34歳 | 31万2,300円 | 4.3%増 |
35〜39歳 | 34万600円 | 3.6%増 |
40〜44歳 | 36万4,300円 | 3.7%増 |
45〜49歳 | 37万7,900円 | 1.4%増 |
50〜54歳 | 38万8,800円 | 2.2%増 |
55〜59歳 | 39万6,200円 | 1.1%増 |
年齢計の伸びは3.1%でした。20〜24歳から30〜34歳までは4%台の伸びで、年齢計を上回っています。45〜49歳は1.4%、55〜59歳は1.1%にとどまりました。
この表は、学歴も勤続年数も混ざった全体の平均です。大学卒の新規学卒者の賃金と、25〜29歳全体の賃金を並べても、同じ条件の比較にはなりません。入社数年目の賃金が初任給に近づいているかどうかは、この統計からは読み取れず、自社の賃金表で確かめる必要があります。
引き上げの判断に、在籍者の賃金が関わっている
産労総合研究所の調査では、初任給を引き上げた理由として「在籍者のベースアップがあったため」を挙げた企業が44.1%(前年48.3%)ありました。据え置いた理由では、「在籍者のベースアップがなかったため」が25.9%です。在籍者の賃金の動きが、初任給の判断に影響しています。
帝国データバンクの「初任給に関する企業の動向アンケート(2026年度)」(2026年2月5日から9日にインターネットで実施、1,541社が回答)では、初任給を引き上げた企業は67.5%(前回71.0%)で、平均の引き上げ額は9,462円でした。企業規模別では、大企業が65.6%、中小企業が68.2%、小規模企業が50.0%です。
同調査は、既存社員の給与が新入社員を下回る逆転現象への懸念から、引き上げを先送りしたり、小幅にとどめたりする企業もあったと伝えています。自由記述には、「既存社員とのバランスを考えると初任給引き上げは難しい」(中小企業、電気機械製造)という声がありました。
図解01
初任給を
- 大企業65.6%
- 中小企業68.2%
- 小規模企業50.0%
記号1つが10%(初任給を引き上げた企業の割合) 全体:67.5%
「採用のために上げ、在籍者は後で調整する」への答え
初任給を先に上げる判断には、もっともな理由があります。採用の条件は募集の時期に決める必要があり、在籍者の賃金の改定は、昇給や評価の時期に合わせて行うため、時期がずれる場合があるからです。それでも、後回しにできない理由があります。
- 後で調整すると決めても、原資と方法が決まっていなければ、調整は始まりません。帝国データバンクの自由記述には、「既存社員に対して大幅な賃上げを行える体力がない」(飲食料品・飼料製造)という声がありました。
- 在籍者のベースアップがあっても、入社数年目との差が保たれるとは限りません。初任給の上げ幅が大きければ差は縮み、在籍者の上げ幅が大きければ差は保たれます。どちらになるかは、自社の賃金表でしか分かりません。
- 時間がたてば差は開く、という見方は、毎年の昇給が続くことを前提にしています。昇給額が小さい年次や、評価によって昇給が止まる年次があると、差が縮んだまま残ります。残るかどうかは、昇給の実績を年次ごとに並べて確かめます。
賃金表の若手の部分から先に決める
初任給の額を決める会議には、入社2年目から5年目の賃金の資料を持ち込みます。年次の範囲は目安で、自社の昇給の仕組みに合わせて調整してください。進め方は次のとおりです。
- 同じ学歴の社員について、現在の初任給と、入社2年目から5年目の年次ごとの賃金を並べます。
- 新しい初任給を当てはめ、現在の昇給のまま続けた場合に、年次ごとの差がどうなるかを見ます。
- 差が縮む年次があれば、その年次の昇給額か、賃金表の改定の幅を決めます。原資を確保できるかも、このときに確かめます。
- 決めた内容を、在籍者に説明する時期と方法まで決めます。
小規模企業で引き上げが50.0%にとどまったように、原資に限りのある会社は、全年次を一度に動かせません。その場合も、どの年次から動かすかを決め、順番を説明できる状態にしておくことが肝心です。
初任給は採用の広告に載る額で、在籍者の賃金は社員が毎月受け取る額です。両方を同じ表の上で説明できることが、採用と在籍者の信頼を支える土台になると考えます。
まとめ
大学卒の初任給は26万2,300円で、前年から5.6%上がりました。賃金の伸びは20代から30代前半に集まり、企業の引き上げの判断には在籍者の賃金が関わっています。自社の賃金表で、同じ学歴の初任給と入社2年目から5年目の賃金を並べることから始めてください。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2025年7月調査、2025年6月分の賃金。2026年10月14日に確認)結果の概況、新規学卒者の賃金/産労総合研究所「2026年度 決定初任給調査」(2026年4月から5月に実施。2026年10月14日に確認)調査結果のページ/労務行政研究所「2026年度 新入社員の初任給調査」(2026年4月30日公表。2026年10月14日に確認)調査結果の資料/帝国データバンク「初任給に関する企業の動向アンケート(2026年度)」(2026年2月5日から9日に実施。2026年10月14日に確認)
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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