厚生労働省の「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表)によると、2025年の離職率は全産業で13.7%でした。ところが産業別に見ると、金融業,保険業の6.6%から宿泊業,飲食サービス業の23.7%まで開いています。自社の離職率が高いのか低いのかは、全体の平均ではなく、自社の産業の欄と、数え方をそろえた自社の数字を並べて初めて読めます。
離職率の全体平均は13.7%、産業別では6.6%から23.7%まで開く
この調査は、5人以上の常用労働者を雇用する全国の事業所から14,840事業所を抽出し、日本標準産業分類の16大産業について、入職者と離職者の状況を聞いたものです。令和7年は1月から6月の上半期と7月から12月の下半期の2回の調査を合わせた年計で、事業所調査の有効回答率は平均60.9%でした。
全産業の離職率は13.7%で、前年から0.5ポイント低下しました。産業ごとの離職率は、次のように分かれています。
産業 | 入職率 | 離職率 | 入職超過率 |
|---|---|---|---|
産業計 | 14.7% | 13.7% | 1.0ポイント |
宿泊業,飲食サービス業 | 27.8% | 23.7% | 4.1ポイント |
生活関連サービス業,娯楽業 | 21.3% | 20.1% | 1.2ポイント |
医療,福祉 | 14.5% | 14.3% | 0.2ポイント |
卸売業,小売業 | 12.6% | 11.9% | 0.7ポイント |
情報通信業 | 13.6% | 10.4% | 3.2ポイント |
製造業 | 9.6% | 9.8% | -0.2ポイント |
建設業 | 10.4% | 8.7% | 1.7ポイント |
金融業,保険業 | 8.7% | 6.6% | 2.1ポイント |
離職率が産業計を上回るのは、宿泊業,飲食サービス業や生活関連サービス業,娯楽業のように、人の入れ替わりが大きい産業です。製造業の9.8%は産業計より低い水準ですが、製造業の中で高いのか低いのかは、同じ製造業の数字と比べなければ分かりません。
図解01
離職率の
- 宿泊業,
飲食 サービス業23.7% - 医療,
福祉14.3% - 製造業9.8%
- 金融業,
保険業6.6%
記号1つが10%(産業ごとの離職者の割合) 産業計:13.7%
離職率は、入職率と並べて読む
調査は、離職率と同時に入職率と入職超過率も示しています。入職超過率は、入職率から離職率を引いた値で、プラスなら入ってくる人が辞める人を上回っています。全産業の入職超過率は1.0ポイントで、前年から0.4ポイント拡大しました。
離職率が近い産業でも、入職率を並べると事情が分かれます。製造業は、入職率が9.6%、離職率が9.8%で、入職超過率は-0.2ポイントです。辞める人のほうが、入ってくる人より多い状態です。複合サービス事業は、入職率が6.3%、離職率が8.6%で、-2.3ポイントでした。反対に情報通信業は、離職率が10.4%と製造業に近い水準でも、入職率が13.6%あり、3.2ポイントの入職超過です。
離職率が低いことは、人員が足りていることを意味しません。離職が少ない一方で入職も少なければ、職場の年齢構成は動かず、欠員が出たときに補充できるかどうかは別の問題として残ります。自社の数字も、離職率だけでなく、同じ期間の入職率と並べて確かめます。
自社の数字と産業の欄は、数え方をそろえてから比べる
調査の数字と自社の数字を並べるときは、数え方が違っていないかを先に確かめます。次の項目が合っていないと、差が出ても、離職の多さを表しているとは限りません。
点検の観点 | 確かめること |
|---|---|
分母 | 調査は、離職理由別の離職率を、離職者数を1月1日現在の常用労働者数で割って算出しています。自社も、年初の人数を分母にしているか |
対象の範囲 | 正社員だけか、パートタイム労働者を含むか。調査の産業計は、一般労働者が11.4%、パートタイム労働者が19.9% |
期間 | 調査は、2025年の1月から12月の1年間。自社が年度や半期で数えていないか |
事業所の規模 | 調査の対象は、5人以上の常用労働者を雇用する事業所。小さな拠点を含めて数えていないか |
産業の区分 | 自社を16大産業のどこに当てるか。複数の事業を持つ場合は、主な事業の区分を決めて記録しているか |
定年退職や契約期間の満了を、離職に含めるかどうかも、社内で決めておく必要があります。調査と同じ定義が分からない場合は、数字を並べるのではなく、自社の年ごとの推移を見る使い方にとどめるほうが、誤読を避けられます。
就業形態を分けると、同じ産業でも水準が変わる
全産業の離職率13.7%は、一般労働者の11.4%と、パートタイム労働者の19.9%を合わせた値です。産業の離職率も、両者の構成比で上下します。
産業 | 離職率(計) | 一般労働者 | パートタイム労働者 |
|---|---|---|---|
宿泊業,飲食サービス業 | 23.7% | 21.5% | 25.0% |
教育,学習支援業 | 15.1% | 9.8% | 26.6% |
医療,福祉 | 14.3% | 13.6% | 15.9% |
卸売業,小売業 | 11.9% | 8.5% | 17.6% |
製造業 | 9.8% | 9.2% | 14.2% |
金融業,保険業 | 6.6% | 6.3% | 10.6% |
教育,学習支援業は、全体では15.1%と産業計を上回りますが、一般労働者に限ると9.8%で、産業計の一般労働者の11.4%を下回ります。パートタイム労働者が26.6%と高いために、全体の数字が押し上げられています。正社員の定着を知りたいときに、全体の離職率を見ると、実態より高く読んでしまうことがあります。
反対に宿泊業,飲食サービス業は、一般労働者でも21.5%と、産業計の一般労働者の11.4%を大きく上回ります。正社員に絞ってもなお高い産業であることが、この表から分かります。
離職の理由は、この集計からは分からない
同じ調査は、離職理由別の離職率も示しています。2025年の離職率のうち、個人的理由によるものが10.2%、事業所側の理由によるものが0.9%でした。男女別では、個人的理由が男性で8.8%、女性で11.7%です。
ここでいう個人的理由は、結婚、出産・育児、介護・看護、その他の個人的理由の合計で、事業所側の理由は、経営上の都合、出向、出向元への復帰の合計です。理由は、離職者がいた事業所が回答したものです。離職理由別離職率の資料で確かめた範囲では、個人的理由の内訳は示されていません。
辞めた本人が何を理由に決めたのかは、この集計では読み取れません。離職率が産業の平均より高い、あるいは低いと分かった後で、その背景を確かめる作業は、自社の退職時の面談や、在職者への聞き取りで行う必要があります。
産業の平均との差から、手を打つ順番を決める
自社の離職率を、数え方をそろえたうえで産業の欄と並べたら、差の向きによって、次に確かめることが変わります。
- 平均より高い場合:入職率も同じ産業の欄と並べ、辞める人が補充で埋まっているかを確かめます。そのうえで、部署、勤続年数、入社の経路で離職を分け、特定の層に偏っていないかを見ます。
- 平均と同じ程度の場合:平均並みであることは、問題がないことを意味しません。産業の平均が高い産業では、自社も同じ水準で人が入れ替わっている可能性があります。育成に時間がかかる職種の離職は、割合が低くても影響が大きくなります。
- 平均より低い場合:離職の少なさを維持できている条件を確かめます。同時に、入職が少なく、欠員の補充や年齢構成が課題になっていないかも見ておきます。
どの場合も、調査の数字は自社を評価する基準ではなく、確かめる順番を決めるための物差しです。5人以上の事業所を対象に、産業ごとに平均した数字であり、自社の規模や地域、職種の構成までは映していません。
まとめ
令和7年の離職率は全産業で13.7%ですが、産業別では金融業,保険業の6.6%から宿泊業,飲食サービス業の23.7%まで開いています。自社の離職率は、分母、対象、期間をそろえたうえで産業の欄と並べ、入職率と就業形態も含めて読みます。まず自社の産業の欄を探し、同じ条件で数え直すことが最初の一歩です。
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表。令和7(2025)年の年計。2026年10月12日に確認)厚生労働省の公表ページ
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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