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はじめに
配置転換、事業の再編、技術の入れ替わり。かつては例外だった変化が、いまでは職業人生の前提になりました。こうした変化に向き合う力を説明する概念がキャリア・アダプタビリティです。本記事では、キャリア・アダプタビリティの意味やよく使われる場面、実務で活かすための留意点を整理してご紹介します。
キャリア・アダプタビリティとは?
キャリア・アダプタビリティとは、キャリア上の移行や予期せぬ変化に対して、自分を適応させていく心理的な資源を指します。米国の心理学者マーク・サビカス氏が提唱したキャリア構築理論の中核をなす概念です。
適応と訳されますが、環境に流されて合わせることを意味するわけではありません。変化を自分の物語のなかに位置づけ直し、主体的に次の一歩を選び取る構えを指します。生まれ持った資質ではなく、経験や支援を通じて育つ資源とされる点が、実務にとって重要な特徴です。
構成する要素は四つあり、頭文字を取って四つのCと呼ばれます。
第一は関心です。自分の職業人生の先行きに目を向け、将来を自分ごととして捉える構えを指します。第二は統制です。キャリアを環境や他者に委ねず、自分の選択として引き受ける意識です。第三は好奇心です。周囲の仕事や役割へ関心を広げ、可能性を探索する姿勢を指します。第四は自信です。困難な状況でも、自分なら課題を乗り越えられるという確信です。
これらは互いに関係し合っています。関心が薄ければ探索は始まらず、自信がなければ選択に踏み切れません。四つを均衡よく育てる視点が求められます。
キャリア・アダプタビリティがよく使われるシーン
- キャリア研修の設計:年代別のキャリア研修で、育成する要素を整理する枠組みとして用いる場面。
- キャリア面談の設計:面談で扱う問いを、四つの要素に対応づけて構成する場面。
- 配置転換・異動時の支援:役割が変わる社員に対し、移行期の心理面を支える場面。
- 中高年層のキャリア開発:役職定年や定年後再雇用を控えた層への支援を設計する場面。
- 若手の早期離職対策:仕事への関心が育たないまま離職に至る要因を検討する場面。
キャリア・アダプタビリティを理解することの重要性
キャリア・アダプタビリティを理解しておくことは、キャリア支援の焦点を定めるうえで役立ちます。キャリア支援というと、適性の診断や職務経歴の整理に重心が置かれがちです。しかし変化の多い環境では、どの職務が向いているかを見極めること以上に、変化に向き合う構えを育てることが実効性を持ちます。
人事や人材開発の担当者にとって、四つの要素は施策を点検する物差しになります。自社のキャリア研修が、将来への関心を喚起する内容に偏っていないか。統制や自信を育てる仕掛けが不足していないか。こうした問いを立てることで、施策の抜けが見えやすくなります。
留意したいのは、この概念を個人の自助努力に押しつけないことです。会社が一方的に変化を強い、適応できない社員の問題として片づけるのであれば、本来の趣旨から外れます。サビカス氏の理論は、個人が自らの職業人生に意味を与えていく過程を支えるものであり、支援する側の関わりを前提としています。制度や上司の関わりを含めて、育つ環境を整える視点が欠かせません。
実務で活かすためのチェックポイント
- 四つの要素で施策を点検する:既存のキャリア研修や面談が、どの要素に偏っているかを確認します。
- 問いを設計する:面談で扱う問いを要素ごとに用意し、対話の広がりを担保します。
- 探索の機会を用意する:社内公募や職務体験など、好奇心を実際の行動へつなげる場を設けます。
- 小さな成功を積ませる:自信は経験から育つため、達成が見える課題を段階的に任せます。
- 上司の関わりを支援する:面談を担う管理職に、要素の意味と問いかけの方法を共有します。
よくある質問(FAQ)
Q1. キャリア自律とはどう違いますか。
A. キャリア自律は、自分のキャリアを主体的に築く姿勢や状態を広く指す言葉です。キャリア・アダプタビリティは、その土台となる心理的資源を四つの要素で整理した学術的な概念です。
Q2. 測定することはできますか。
A. 四つの要素に対応した尺度が研究の場で用いられています。実務では、面談の観点として活用する例が多く見られます。
Q3. どの年代を対象とすべきですか。
A. 特定の年代に限りません。入社時、中堅期、役職定年前など、移行が起きる節目ごとに扱う意義があります。
Q4. 研修ではどのように扱えばよいですか。
A. 過去の変化への向き合い方を振り返る演習と、四つの要素に沿った自己点検を組み合わせる方法が用いられます。
Q5. 短期間で高められますか。
A. 一度の研修で大きく変わるものではありません。面談や配置の機会と組み合わせ、継続的に働きかけることが前提となります。
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