⌖ Detail
はじめに
「障害者雇用に力を入れて法定雇用率を上回っているが、その取り組みが金銭的にどう評価されるのか分からない」「障害者雇用の助成金制度が複雑で、自社がどの支援を受けられるのか整理できていない」。人事・労務を担当する方であれば、こうした悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。2026年7月には障害者の法定雇用率がさらに引き上げられる予定であり、障害者雇用への対応は多くの企業にとって重要性を増しています。本記事では、法定雇用率を上回って障害者を雇用する企業に支給される「障害者雇用調整金」について、制度の基本的な仕組みから実務での留意点までを解説します。
障害者雇用調整金とは?
障害者雇用調整金とは、常用労働者数が100人を超える事業主が、法定雇用率を上回って障害者を雇用している場合に、その超過人数に応じて支給される金銭のことです。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営する障害者雇用納付金制度の一環として設けられています。
障害者雇用納付金制度は、法定雇用率を達成できていない事業主から納付金を徴収し、それを財源として、法定雇用率を上回って障害者を雇用している事業主に調整金や報奨金を支給する仕組みです。事業主間で経済的な負担を調整し、社会全体で障害者雇用を支え合うという考え方に基づいています。障害者雇用調整金は、この仕組みのなかで「達成企業への還元」にあたる部分です。
よく使われるシーン
障害者雇用調整金という言葉は、主に次のような場面で使われます。
まず、障害者雇用に積極的に取り組む企業が、その成果を経営層に説明する場面です。法定雇用率の達成状況を財務的な観点からも示す材料として用いられます。次に、年に一度の障害者雇用状況報告や納付金の申告手続きを行う場面です。実際に受給できる調整金の見込み額を試算する際にこの言葉が使われます。また、障害者雇用の推進を検討している企業が、他の助成金制度と比較しながら自社にとってのメリットを整理する場面でも登場します。特例子会社の設立を検討する企業が、グループ全体での障害者雇用率算定とあわせて調整金の見込みを確認する場面でも使われることがあります。
障害者雇用調整金を理解することの重要性
障害者雇用調整金の仕組みを理解しておくことには、複数の意義があります。第一に、障害者雇用への取り組みを、コストの側面だけでなく制度上のメリットもあわせて経営層に説明できるようになる点です。第二に、障害者雇用納付金制度全体の仕組みを理解することで、自社が納付金の対象なのか、調整金の受給対象なのかを正確に把握できる点です。申告を誤ると、本来受け取れるはずの調整金を受給し損ねる、あるいは納付義務を見落とすといった事態にもつながりかねません。第三に、法定雇用率の引き上げが続くなかで、障害者雇用を単なる法令遵守としてではなく、制度的な支援も活用しながら戦略的に推進する視点を持てる点です。障害者雇用への理解は、多様な人材が力を発揮できる組織づくりの土台にもなります。