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皆勤手当とは?割増賃金・欠勤控除の取扱いと設計の注意点を解説
はじめに
出勤を続けた社員に報いたい。皆勤手当は、そうした素朴な動機から設けられることの多い手当です。しかし実務では、割増賃金の計算や欠勤控除、最低賃金との関係で判断を誤りやすい論点を含んでいます。設計を誤ると未払い賃金の発生につながりかねません。本記事では、皆勤手当の基本と法的な取扱い、制度設計の注意点を解説します。
皆勤手当とは?
皆勤手当とは、一定期間において欠勤や遅刻・早退がなかった労働者に対して支給される手当をいいます。精皆勤手当という名称で、欠勤が一定回数以内であれば減額して支給する形をとる場合もあります。支給の目的は出勤率の維持や勤怠の安定にあり、製造業や店舗運営など、要員配置が計画どおりに進むことが重要な業種で採用される例が多く見られます。法律上の重要な論点は、割増賃金の算定基礎に含めるかどうかです。労働基準法では、割増賃金の計算基礎から除外できる賃金として、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の七つが限定的に定められています。皆勤手当はこのいずれにも該当しないため、毎月支給する場合は割増賃金の算定基礎に含めなければなりません。なお、支給を3か月ごとなどに変更すれば「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当し得ますが、割増賃金を抑える目的だけで変更することは脱法的と判断される可能性があります。また、最低賃金の比較においては、精皆勤手当は算入しない賃金として扱われる点にも注意が必要です。
皆勤手当がよく使われるシーン
賃金制度の設計や見直しの場面で検討されます。基本給とは別に勤怠面のインセンティブを設けたい場合や、繁忙期に安定した出勤を確保したい場合に選択肢となります。給与計算の実務では、毎月の支給判定が必要になります。何をもって欠勤とするか、有給休暇の取得は欠勤に当たるのか、遅刻・早退は何回まで許容するのかといった基準を、就業規則や賃金規程に明記しておく必要があります。とくに年次有給休暇の取得を欠勤扱いとして皆勤手当を不支給とする運用は、有給休暇の取得を抑制する不利益な取扱いに当たるおそれがあり、慎重な判断が求められます。労使間の紛争や労働基準監督署の調査においても論点となります。割増賃金の算定基礎から皆勤手当を除外していた場合、過去にさかのぼって未払い分の精算を求められることがあります。同一労働同一賃金の観点から、正社員にのみ皆勤手当を支給し、有期雇用の従業員に支給しない取扱いの妥当性が問われた事例もあります。
皆勤手当を理解することの重要性
皆勤手当を理解することは、賃金制度の適法性を保つうえで欠かせません。手当の名称ではなく実質で判断されるという原則を踏まえ、支給要件と計算方法を整合させておく必要があります。「除外できる手当は限定列挙である」という点を押さえておけば、多くの誤りは防げます。制度の趣旨という観点からも検討の余地があります。皆勤手当は出勤そのものを評価する仕組みであるため、体調不良でも無理に出勤する動機を生みやすい面があります。感染症対策や健康経営の観点からは、この副作用を無視できません。近年は、皆勤手当を廃止し、成果や職務に応じた処遇へ組み替える企業も見られます。存続させる場合でも、有給休暇の取得を不利益に扱わない設計とし、支給要件を明確にしておくことが求められます。手当を見直す際には、既存の従業員にとって不利益変更となる可能性があるため、労使での十分な話し合いと合理的な移行措置が必要です。