⌖ Detail
U理論とは?変化の兆しを捉える組織変革のプロセスを解説
はじめに
新しい制度や研修を導入しても、組織の反応が過去の延長線上にとどまり、期待したほどの変化が起きないと感じることはないでしょうか。前例に沿った改善を重ねるだけでは、環境の変化に追いつけない場面が増えています。こうした行き詰まりを乗り越える枠組みとして、近年、人材育成や組織開発の現場で注目されているのがU理論です。本記事では、U理論の内容と実務での活用のしかたを解説します。
U理論とは?
U理論とは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のオットー・シャーマー氏が提唱した、個人や組織が変容を遂げる過程を説明する理論です。科学・経営・社会の各分野で活動する実践者への150件を超える聞き取り調査をもとに体系化されました。理論の名称は、変化の過程を図に表した形に由来します。過去の枠組みをいったん手放して内面を深く見つめる段階でアルファベットの「U」の字のように下降し、そこで得た気づきをもとに新たな可能性を形にして実践へつなげる段階で上昇していきます。
U理論では、変容の過程を大きく3つの局面に分け、実務ではさらに7つの段階に分けて説明します。前半は、これまでの思考の枠組みをいったん保留し、現場をありのままに観察し、内面の奥にある意図とつながる局面です。後半は、そこで得た気づきを構想として結晶化し、小さな試作を重ねながら実践へ移す局面にあたります。過去の成功体験や固定観念をいったん手放し、まだ形になっていない未来の兆しに意識を向ける点が、通常の課題解決の手法と異なります。Uの底にあたる最深部の局面は「プレゼンシング」と呼ばれ、出現しつつある未来の可能性と深くつながる状態を指すとされています。
よく使われるシーン
経営層や次世代リーダーを対象とした組織変革研修で、変化への向き合い方を学ぶ枠組みとして紹介される場面で使われます。事業のビジョンづくりや新規事業の構想段階で、過去の延長にない発想を引き出すワークショップの設計思想として用いられることもあります。組織開発の専門家が、対話を重ねながら組織の関係性を変えていく取り組みを説明する際にも登場する言葉です。近年は、日本企業の人材育成部門でも、次世代リーダー育成プログラムの一環として紹介される機会が増えています。
U理論を理解することの重要性
人事担当者がU理論を理解しておくことには、実務上の意義があります。第一に、研修や制度の効果が思うように現れない背景に過去の枠組みにとらわれた思考があると気づき、その前提を問い直す視点を持てます。第二に、経営層や現場のリーダーと対話を重ねる際、結論を急がずに内省の時間を確保する意義を、理論的な裏づけとともに説明できます。第三に、組織変革を一度きりの施策で終わらせず、観察と内省と試作を繰り返す継続的な取り組みとして設計する発想を得られます。
実務で活かすためのチェックポイント
組織変革の研修やワークショップを設計する際、結論を急がせず、現場の観察や内省に十分な時間を確保しているかを確認します。
経営会議や戦略検討の場で、過去の成功パターンを前提にした議論に偏っていないか、あらためて問い直す機会を設けます。
新規事業やビジョン策定の過程に、現場の声に耳を傾ける対話の時間を組み込みます。
小さな試作や実験で発想を検証する文化が、自社の組織に根づいているかを点検します。
U理論を紹介する際は、抽象的な理念にとどめず、自社のどの取り組みに応用できるかを具体的に示します。
よくある質問
U理論と従来の課題解決手法はどう違うのでしょうか。
従来の手法の多くは、既知の原因を分析して対策を導く進め方を取ります。U理論は、過去の枠組みをいったん手放し、現場をありのままに観察したうえで、まだ形になっていない可能性から発想する点に特徴があります。
U理論を学ぶにはどのような方法がありますか。
オットー・シャーマー氏の著書のほか、企業研修やワークショップで体験的に学ぶ方法があります。理論の理解にとどまらず、実際に対話や内省の時間を体験することで理解が深まるとされています。
U理論はどのような企業に向いていますか。
特定の業種や規模に限らず、過去の延長にない発想や組織の関係性の変化を必要とする企業に広く応用できる考え方です。
U理論の実践には時間がかかりますか。
観察や内省に一定の時間を要するため、短期間で結果を求める施策には向きません。中長期的な組織変革の取り組みとして位置づけることが前提となります。
U理論とデザイン思考は同じものですか。
どちらも現場の観察を重視する点は共通しますが、U理論は内省や関係性の変化を重んじる点に違いがあります。両者を組み合わせて活用する事例もあります。
一人でもU理論を実践できますか。
基本的な考え方は個人でも実践できますが、対話や内省を深める過程では、他者と共に取り組むことでより大きな気づきが得られるとされています。
自社の人材育成・組織課題に関するご相談
過去の延長にない発想で組織変革を進めたい、次世代リーダーの育成に新しい視点を取り入れたいとお考えの場合は、お気軽にご相談ください。貴社の状況に応じた取り組みをご提案いたします。
https://wonderful-growth.com/contact
関連情報
- カテゴリ:マネジメント
- スラッグ:theory_u
- 想定URL:https://wonderful-growth.com/swk/hr_words/theory_u
- 関連用語:デザイン思考、組織開発、チェンジエージェント
✺ Editor’s Memo
現場での運用は、業界・規模・組織文化によって大きく変わります。記事内のインタビュー事例も併せて参考にしてください。
— SHARE with カイシャの育成論 編集部