✦ Interview · No. 0089

IT・メディア・広告業界

株式会社コマースフォース

代表取締役社長 小野瀬冬海

2026/06/08

◈ Editor’s Note

「チャットボットの会社が、人に依存していたら説得力がない」──新卒ポテンシャル採用から即戦力ジョブ型採用へ、180度の方針転換で業績を爆発的に伸ばしたAIネイティブコマース企業の"少数精鋭・高付加価値経営"の全貌に迫る。 評価指標は「粗利倍率」ただ一つ。中間管理職ゼロのフラット組織、ジョブ型雇用、全社員フルリモートワーク、自由と自己責任を徹底した経営哲学──。 株式会社コマースフォース 代表取締役社長CEO 小野瀬冬海氏は、Abemaやインターネット広告最大手のサイバーエージェント出身のIT起業家だ。24歳の若さでコマースフォースを創業し、東京都新宿区に本社を置く急成長中のAIネイティブコマースソフトウェア企業を率いる。 年間100社以上のクライアントと会食し、生の声をプロダクトや新規事業に反映し続けている。主力事業のAIチャットボット「チャットフォース」やAI UGCプラットフォーム「UGCフォース」なども実際に顧客の声から生まれたプロダクトだ。 会社員時代の、テモナでの上場経験とサイバーエージェントで培った即断・即決・即実行するスピード経営の原体験から、エージェンティックコマース時代のリーディングカンパニーを目指すビジョンまで、その育成論の核心に迫りました。

カイシャの育成論

──現在、採用や育成において特に力を入れている取り組みについて教えてください。

小野瀬様:当社の特徴として、フルリモートワークで自走可能なジョブ型の即戦力人材を厳選して採用している点が挙げられます。
以前は新卒を中心とした完全オフィス出社で中長期の人材育成を前提としたポテンシャル採用を行っていましたが、現在は全く逆の方針に転換しました。
その結果、特にここ数年で業績が爆発的に成長しました。
AI化などにより無駄を徹底的に省き、いかにして少数精鋭で高い粗利益を生み出せるか、即戦力として活躍できるキャリア人材を採用するか。
ここに特に注力しています。

──即戦力採用では母数が限られるという課題もあるかと思います。
この転換に至った背景を教えていただけますか。

小野瀬様:一番大きな理由は、当社の事業内容そのものが変化したことです。
新卒文化が強かった時代は、SNSマーケティング事業やキャスティング事業などの比較的未経験の若手でも活躍しやすい事業を行っていました。
一方で現在は、専門知識が必須なAIチャットボットやAI UGCプラットフォームなどのAIコマースソフトウェア(AI SaaS)事業が主軸になっています。
創業当時の労働集約型のビジネスから、AIプロダクトを通じて顧客の課題を解決するプロダクトドリブン型のAIネイティブカンパニーへと事業を変革しました。
結果として、人に依存しないビジネスモデルになり、新卒大量採用やそれに伴う教育担当、オフィス出社などが不要になりました。
事業内容の変化が、この方針転換の最大の理由です。

──世の中から求められるニーズの変化も影響していますか。

小野瀬様:まさにそうです。
当社が提供している「チャットフォース(Chatforce)」と「UGCフォース(UGCforce)」という2つのメインプロダクトは、どちらもクライアントの声から生まれました。
広告代理事業やコンサル、キャスティングを手がける中で、顧客から「こんなサービスはないのか」「こんな機能はないのか」という声をいただき、それをプロダクト化したものです。
AI時代の到来も追い風になっています。
チャットボットによる24時間365日問い合わせ対応の自動化や、チャットボット内での決済機能など、効率化のニーズが非常に高まっています。

そして、これが採用方針の転換における決定的な理由でもあるのですが、チャットボットを提供している会社が、社員数を大量に抱えて人に依存していたら、説得力がないですよね。
チャットボットは本来、人の代わりに問い合わせ対応や予約・決済を行うものです。
「業務を効率化しましょう」 「生産性を上げましょう」と顧客には提案しながら、自社が人海戦術に頼っていたら矛盾してしまう。
ここはかなり意識しました。

──この採用方針の転換によって、社内の文化や雰囲気にも変化はありましたか。

小野瀬様:大きく変わりました。
未経験の新卒が多かった時代は、自走できるようになるまでに時間がかかるため、育成のためにオフィス出社にせざるを得ない状況でした。
他にも新卒向けに行っていた研修や教育プログラム、それに伴う教育担当や中間管理職が必須となるピラミッド組織(ヒエラルキー組織)、将来への期待で責任あるポジションを与える若手抜擢人事、若手のモチベーションを上げるための活性化イベントなども盛んに行っていましたが、今はすべて廃止となっており、そういう意味で言うと今は真逆の文化です。
即戦力人材を集めているので、一言で言えば「自由と自己責任」の会社になりました。
全社員フルリモートワーク、全社員が完全在宅勤務で、場所を問わず全国各地で働いています。
働く場所も髪型も髪色も服装も、すべて自由です。
その代わり、結果を出せなければダイレクトに給料や評価に反映されます。
自由を得るということは、責任が伴うということです。

──評価制度についても詳しくお聞かせください。

小野瀬様:当社は「少数精鋭・高付加価値経営」を掲げており、この「付加価値」で評価を行っています。
指標はシンプルで、自分自身が生み出した粗利益が、人件費の何倍になっているかだけです。

この指標の良いところは、人事評価の前に本人が「自分がどれぐらいの付加価値を生み出しているのか?給料の何倍の粗利を生み出しているのか?」がわかるという点です。

これまでは定性評価での抜擢や将来への期待を重視した若手を優遇した抜擢を意図的に行ってきましたが、中途社員からの不満の声や、経験が浅く実力が伴う前の若手抜擢により、インシデントの多発、役職や評価に見合った成果が出せず早期離職につなってしまったりなどの問題がどうしてもありました。

しかし今の粗利倍率=労働生産性による評価制度は、正当かつ筋肉質な経営を実現させ、粗利益という正当な成果で評価しているため、活躍している生産性の高い人材が報われる仕組みです。

日系企業には珍しい外資系企業に近い文化かもしれません。
ただ、その代わりフルリモートワークで髪型服装などの規定もなく、非常に自由で働きやすい会社ですので、どう天秤にかけるかが、まさに「自由と自己責任」ということだと思います。

──採用面接の時点で、この評価方針は伝えているのですか。

小野瀬様:採用面接の時点で、「コマースフォースは自由と自己責任の会社で、個人が生み出した粗利益(付加価値)で評価します」とすべての職種・ポジションに対して明確に伝えています。
そこで違和感を覚えたり、成果主義の文化が合わないと感じた方は、自ら辞退されることもあります。
入り口でしっかり擦り合わせをして、同じ認識でスタートすることを大切にしています。

会社の理念や考え方

──貴社の組織運営の根底にある考え方について、フルリモートで中間管理職もいないとのことですが、組織としてどのように機能しているのですか。

小野瀬様:当社はピラミッド型ではなく、フラット型組織で運営しています。
いわゆるホラクラシー型組織です。
中間管理職が存在せず、上司というものが基本的にはいません。
強いて言えば私が上司になりますが、報告は私への週次の直接報告のみで、シートに結果を記入するだけで完結するよう、すべて仕組み化しています。

一人ひとりが個人事業主のプレイヤーのような存在です。
雇用形態は正社員ですが、採用時に「実態としてはフリーランスの集まりのような会社です」と敢えてわかりやすく伝えるようにしています。
各々がジョブ型で採用されたポジションにおいて、自分が会社から求められている役割(ポジション)を全うする。
それが当社の組織文化です。

──出社回帰の流れがある中で、完全フルリモートを貫ける理由はどこにあるのでしょうか。

小野瀬様:大前提、当社のビジネスモデルがAIチャットボットなどの場所にとらわれない事業内容というのは大きいと思います。
あとは自走できるキャリア人材・即戦力人材の採用をしているというのもあります。
極論を言えば、結果さえ出していれば一切口を挟みません そもそも会社から管理してもらわないと成果が出せない、頗張れないという人は当社に向いていません。
自分で自分を管理し、自走できる人材が活躍できる会社です。
会社は大前提、学びや教育の場ではありません。
それは学校やビジネススクールや資格などで自分でお金を払って学んだ方が良いでしょう。
コマースフォースの場合、ミッションにもある通り、「コマース(顧客)を成功に導く」ために集う場所であり、顧客を成功に導いていく中で、結果的に学びや成長を得られるということだと思います。
そのため過程ではなく、結果だけで評価する。
だからこそ、フルリモートが成立するのだと考えています。

会社の歴史・転換点

──こうした経営哲学やスピード重視の姿勢は、どのような原体験から生まれたのですか。

小野瀬様:私の新卒時代の経験が最も大きいです。
テモナというECカートシステムのスタートアップに新卒で入社しました。
当時、社員数は9人程度で直属の上司が社長でした。
上場前の創業期から東証グロース上場(IPO)までの成長過程を中から社員として経験させてもらいました。
社員数が少なかったので、リード獲得やセミナーなどのマーケティング業務から新規営業、その後のカスタマーサクセス、経理業務など多岐にわたる業務をすべて経験させてもらうことができました。
時間を忘れてしまうほど目の前の仕事に沒頭し、ハードに働いていました。
あの時のスピード感、変化の中で突き進む組織の強さ、ハードシングスも含めたあらゆる過程を中から肌で感じられたことが、今の経営の土台になっています。

──サイバーエージェントでのご経験も影響しているのでしょうか。

小野瀬様:サイバーエージェントは日本を代表するメガベンチャーですので、当時の入社時点ですでに三千人を超える社員がいました。
大企業でありながら大企業だと感じさせない仕掛けが多々あり、その1つに、半期に一度の大規模な人事異動です。
基本的に同じ業務、同じ部署にずっといるということがない。
さらに、クォーターごとに席替えも行っていました。
これは意図的にマンネリ化を防ぎ、社員には即断即決即実行でスピーディに変化することが求められます。
こうした「変化を常態化させる」文化を、会社員時代に学んだことも大きく影響していると思います。

そして佐川社長も藤田社長もお二人とも共通していたのは、変化するスピード。
大胆さ。
即断即決即実行を体現されていた方々でしたので、社員の立場からすると変化についていくのが大変でしたがそれがとても楽しく、刺激的で、本当にそこを学ばせてもらいました。

活躍する社員について

──貴社で活躍できるのはどのような人材ですか。
スキル以外にも重視している点があれば教えてください。

小野瀬様:基本的にはジョブ型の即戦力採用ですので、営業なら営業のスペシャリスト、エンジニアならエンジニアのスペシャリストを採用しています。
ただし、プラスアルファとして、EC業界への精通を非常に重視しています。

極端な例ですが、仮に不動産や保険会社のトップセールスマンが来たとしても、当社の営業として即戦力で活躍するのはなかなか難しいと思います。
当社はEC業界に対してAI SaaSを開発・提供している会社ですから、ECに精通していて、かつ営業力がある人。
ECに精通していて、かつカスタマーサクセス力がある人。
ECに精通していて、かつエンジニアリングスキルがある人。
EC業界への経験と理解がなければ、どんなにスキルが高くても採用しないという方針を貫いています。

──バリューとして掲げている「即断即決即実行」も、求める人材像に直結しているのですね。

小野瀬様:はい。
私が一番大事にしているバリューの1つです。
例えば、新卒組織から中途組織に切り替える際も、一般的には徐々に移行する会社が多いかもしれません。
しかし当社は、翼日にはもう動き始めて、すさまじいスピードで全面的に入れ替え、結果的に業績が大きく急成長しました。
この変化のスピードこそ大企業にはできない創業社長が現役のベンチャー企業ならではの強みだと思います。
内容によっては時にはドライに感じられるかもしれませんが、バリューの1つでもある「即断・即決・即実行」の通りに経営の意思決定をしていくという姿勢は一貫しています。
会社の理念であるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)があるお陰で、意思決定にブレがなく、個人的な私情を挟まないようにしています。
理念がないと、仮に社内から反対があった時に私情を挟んで「やっぱやめておこう」と意思決定がブレブレになりかねません。
しかし理念があれば意思決定がブレない。

新規事業の立案、撤退、縮小、人事異動まで、あらゆる意思決定を理念のMVVを軸に、即断・即決・即実行しています。

変化の早いAI時代において、とにかく変化を楽しみ、自立し、早く行動できる人材を特に求めています。

会社の事業について

──改めて、現在の事業内容と、事業が育成方針に与えている影響についてお聞かせください。

小野瀬様:当社はAIコマースソフトウェア事業を主軸に、チャットフォース(Chatforce)とUGCフォース(UGCforce)という2つのメインプロダクトを提供しています。
どちらもクライアントの声から生まれたプロダクトです。

私自身、年間100社以上のクライアントと会食をすると決めていまして、全国に出張しながら直接お会いしています。
その場で「今、率直に何を思っていますか」「どうなっていったらいいですか」とヒアリングし、持ち帰って事業化したりプロダクトの改善に活かしています。
このサイクルをすさまじいスピードで回しています。
ここでも即断・即決・即実行しています。
社員はどうしても目の前のことに集中しがちですので、クライアントの生の声を拾って中長期的な未来を描くのが私の仕事だと考えています。
社長室にこもって1人で考えたり、社内会議だけで答えを出すのではなく、バリューの1つにもある「答えは会議室ではなく、現場にある」 を自ら体現しています。

チャットボットやUGCツールといった専門性が問われるプロダクトドリブンの会社だからこそ、少数精鋭の高付加価値経営と相性が良かったのだと感じています。

未来への取り組み・今後の展望

──最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

小野瀬様:EC業界は今、大きなパラダイムシフトが起きています。
自律型のAIエージェントが主流になりつつあり、これまで人間がECサイト上で商品を検索し、比較し、決済していた流れが根本から変わろうとしています。
AIエージェントが商品の比較から検討、決済まで一気通貫で行う。
これを「エージェンティックコマース(AC)」と呼びますが、当社はこのACのリーディングカンパニーになるという目標を掲げています。

エレクトロニックコマースのECから、エージェンティックコマースのACへ。
これまで覇権を握っていたECプラットフォームの時代から、ACのプラットフォーマーがどんどん台頭してくると見ています。
AC時代に伴い、D2C(Direct to Consumer)もまた、追い風になると見ています。
その時代の変化において、当社がしっかりリーディングカンパニーとしての地位を確立できるよう、チャットフォースをはじめとするAIチャットボットの展開を進めています。

もう一つの軸として、日本のコマースにおけるEC化率とAI化率の向上があります。
中国やアメリカと比較して、日本は商取引のAI化率もEC化率もまだ低い水準にあります。
コマース事業者が成功するためのAIインフラを整え、日本のコマース全体を底上げしていく。
「ECのAIインフラになる」というビジョンを、必ず実現していきたいと考えています。

──今後どのような人材と一緒に働いていきたいとお考えですか。

小野瀬様:今日一貫してお話しした「自由と自己責任」のもと、フルリモートワークのフラット組織ですので、「教育環境が整った会社で働きたい、変化せずに腰を据えて安定した会社で働きたい」という方には向かない会社だと思います。

むしろベンチャーならではの「大胆な変化とスピードを楽しめる方」でないと向きません。

即戦力として自律して働ける方、即断即決即実行できる方はとても合う会社だと思います。
これまでの経験をもとに自由に自分のスキルを活かして働きたい、より自分のバリューを発揮していきたいと考えるなら、とてもよい環境です。
エージェンティックコマース時代が到来する中で、当社はAIネイティブのリーディングカンパニーとして日々邁進しています。
ぜひ一緒にミッション・ビジョン・バリューを実現していけたらと思います。

✺ Interviewees

お話を伺った方

  • 代表取締役社長

    小野瀬冬海

    テモナ株式会社(証券コード:3985)、 株式会社サイバーエージェント(証券コード:4751)を経て、 2017年8月に株式会社コマースフォース 設立。 代表取締役社長 就任(現任)。

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