✦ Interview · No. 0093

小売・卸業界

株式会社フォーカス

大堀澤中

2026/07/27

◈ Editor’s Note

山梨県に本社を置き、オリジナルウェア製作EC「CLAT-JAPAN」を展開する株式会社フォーカス。同社では新卒社員にも売上や利益だけでなく、社長を含む給与情報まで公開し、自ら配属先を選択する完全希望配属制を採用しています。さらに2026年には、新卒から経営を学ぶことのできる「オフィサー部門」も新設しました。一見すると大胆にも思えるこれらの取り組みの背景には、「自ら判断する人を育てる」という明確な思想があります。 同社はコロナ禍の危機を乗り越え、2020年から2025年にかけて売上高を約10億円から約37億円へと伸長させました。その過程で、人材育成をコストではなく投資と位置づけ、2023年からは本格的な新卒採用にも挑戦しています。 「集う価値に彩りを添える」という理念のもと、単なる製作会社ではなく「お客様の代理人」でありたいと語るフォーカス。今回は、同社が実践する独自の人材育成と組織づくり、そしてその根底にある考え方についてお話を伺いました。

カイシャの育成論

──現在、人材育成において最も注力されている独自の取り組みについて教えてください。

大堀様:当社は2023年に新卒採用を開始し、2026年までの4年間で計37名の新卒社員を迎え入れてきました。
私たちが最も大切にしているのは「自ら判断する人を育てること」です。
そのためには、まず会社全体を理解してもらう必要があります。
自分の担当業務だけを見ていては、自分の判断が会社全体にどのような影響を与えるのか分かりません。
だからこそフォーカスでは、毎月の売上や原価、販管費などの数字を仔細まで公開しています。
社長を含めた社員の給与も公開しており、全員が同じ情報をもとに考えられる環境を整えています。

──新入社員にもそこまで経営情報を公開されているのですね。

大堀様:はい。
経営層だけが数字を握り、従業員は言われたことだけをやるという組織では、いつまで経っても自立した組織にはならないと思っています。
もちろん、それぞれの部門には役割があります。
しかし、自分の部門だけを見ているとどうしても視野は狭くなります。
会社全体の状況を理解したうえで、自分は何をすべきかを考えられることが重要だと思っています。

──そうした考え方は部門配属の際にも反映されているのでしょうか。

大堀様:そうですね、新入社員が自ら配属先を選ぶ完全希望配属制を採用しています。
もちろん相談は乗りますが、社会人として最初の大きな意思決定を自分自身で行ってもらいたいと思っています。
実際の向き不向きはやってみないと分からない部分もありますが、自分で考え、選択し、行動するという経験がその後の仕事への向き合い方を大きく変えると思います。

──新設されたオフィサー部門についても教えてください。

大堀様:はい。
今年から「オフィサー部門」を新設しました。
一般的には、まず業務で高い成果を出し、その先に経営があると考えられています。
しかし私たちは、経営と業務はそもそも競技が異なると考えています。
業務には業務に必要な知識や経験がありますし、経営には経営に必要な知識や経験があります。
そこで私たちは、業務のプロフェッショナルを目指すのと同じように、経営のプロフェッショナルを目指すという選択肢も用意しました。
新入社員だから業務から始めなければならないとは考えていません。
経営に関心があるのであれば、早い段階から経営を学び、将来的に会社を担う人材になってほしいと思っています。

──新入社員の段階から、とても大きな選択があるのですね。

大堀様:仕事を進める上で大切なのは、もちろん技能の巧拙もありますが、根底には認知・判断・実行のサイクルをいかに早く積み重ねるかという点にあると思います。
実際にやってみると想像と違うこともありますし、途中で考えが変わることもあります。
だからこそ私たちは、早い段階から意思決定の機会を持つことに価値があると考えています。

デザインの画面を見ながら教え合う社員の皆様

会社の理念や考え方

──貴社では「自ら判断する人」の育成を重視されていましたが、​その背景にはどのような考え方があるのでしょうか。

澤中様:私たちはオリジナルウェアを販売・製作する会社ですが、Tシャツやグッズそのものを売っているという感覚は全くありません。
フォーカスは「集う価値に彩りを添える」という理念を掲げ、お客様が本当に実現したいことに寄り添う会社です。
例えば、体育祭や文化祭、イベントやチーム活動など、人が集う時間は仲間たちとの繋がりが生まれる場面でもあります。
オリジナルウェアは、そうした時間をより良いものにするための手段のひとつです。
私たちにとって大切なのは商品を販売することではなく、お客様の大切な時間を成功させることです。
だからこそ、私たちは単なる製作会社ではなく、「お客様の代理人」であると考えています。

──「お客様の代理人」とは、どのような意味でしょうか。

澤中様:お客様が本当に求めているものを一緒に考え、成功のために最善の提案をするということです。
例えば、お客様からご注文いただいた内容であっても、そのまま進めることが最善ではないと判断すれば別の商品をご提案することもあります。
実際に、白くて薄いTシャツをイベントで使いたいというご相談に対して、透ける可能性や着用シーンまで考慮して別の商品をご案内したこともあります。
私たちはご注文内容をそのまま実現することではなく、お客様が本当に実現したいことに向き合いたいと考えています。

──そのために自ら判断する人を重視されているのですね。

澤中様:そうですね。
お客様の代理人として振る舞うとき、マニュアル通りの対応では足りない場面が出てきます。
お客様にはそれぞれの事情があるため、その場その場で状況を理解し、自分で考え、判断し、行動する必要があります。
だからこそフォーカスでは、社員の自立を大切にしています。
ただし、自立というのは自分勝手に行動することではありません。
私たちは、個々が自立した上で、互いが協力することによってさらに大きな価値を生み出せると考えています。
これもひとつの集う価値だと考えています。

会社の歴史・転換点

──そうした考え方は、創業当初から変わらないのでしょうか。

大堀様:根本的な考え方は創業当初からほとんど変わっていません。
「集う価値に彩りを添える」という考え方も、「お客様の代理人になる」という考え方も、昔から大切にしてきました。
また、創業当初から「知積・深考・自行」という独自の行動指針を掲げています。
知識を蓄積し、深く考え、そして行動する。
言葉にすると当たり前ですが、創業以来変わらず大切にしてきた考え方です。
ただ、正直に言えば当時はそれを十分に実現できる組織ではありませんでした。
考え方はあっても、それを実現できるだけの組織体制や人材が十分ではなく、目の前の業務を回すことで精一杯だったと思います。

──転機となった出来事がありましたか?

大堀様:きっかけとなったのはコロナ禍だと思います。
当社も非常に厳しい状況に置かれ、ひと月のご注文が90%減になることもあり、事業の継続すら危ぶまれる状況でした。
ただ、その経験があったからこそ、「本当に会社として何を実現したいのか」「そのためにどのような組織であるべきなのか」を改めて考えることになりました。
結果として、改めて人こそが会社の競争力の源泉なのだという考えが強くなりました。

──そこから新卒採用にも取り組まれるようになったのですね。

大堀様:はい。
2023年4月には1期生となる14名が入社しました。
社内に常勤するメンバーは、社長や役員を含めても17名でしたから、組織の人数が2倍になるほどのかなり思い切った人数でした。
研修負荷も大きかったですし、戦力化までには時間もかかります。
実際、半年近い研修を行い、本格的に戦力として活躍できるようになるまでには1年ほどかかりました。
短期的な効率だけを考えれば、決して合理的な選択ではなかったと思います。
しかし現在では23年入社メンバーが会社の中核として活躍しています。
人材育成はコストではなく投資であるということを実感する出来事になりました。

──その経験が現在の人的資本戦略にもつながっているのでしょうか。

大堀様:そう思います。
正直に言えば、23年入社の14名を採用したときには、本当に育て切れるのか、採りすぎたかもしれないと不安もありました。
しかし結果として、私たちが想像していた以上に成長し、会社を支える存在になっています。
だからこそ、26年入社で想定以上の人数から内定承諾をいただいたときも、人数だけを理由に採用を見送ることはしませんでした。
私たちは最初から完成された人材を採用しているわけではありません。
将来活躍してくれると信じられる人材に機会を託し、その成長に投資しているのだと思います。

製品を確認する社員の皆様

活躍する社員について

──現在社内で活躍されている方々に共通する特徴はありますか。

澤中様:就職活動中の学生からもそうしたご質問をよくいただくのですが、活躍している人に共通点はないと思っています。
新しい事業の立ち上げを進める人もいますし、圧倒的なスピードでやり切る人もいます。
周囲を巻き込みながら成果を出す人もいれば、専門性を磨くことで価値を発揮する人もいます。
大切なのはその人らしさを活かして仕事に取り組むことだと思います。
実際、2023年に入社した新卒メンバーが今では会社の中心となって活躍していますが、その方法は本当に様々です。

──それぞれの個性を活かして多様な活躍をされているということですね。

澤中様:そうですね。
もし、あえて共通点を挙げるとすれば、冒頭でもお伝えした自立と協力だろうと思います。
一人で何でもできる必要はありません。
自分の考えを周囲に伝え、多くの協力を得ることで大きな価値を生み出すことができると思います。

──そうした考え方は、完全希望配属とも関係しているのでしょうか。

澤中様:そう思います。
自分で選択することを重視していますので、実際にやってみると想像と違うこともあります。
そのため配属3か月後の面談では、希望があれば配属先を変更できる仕組みも設けています。
実際に23卒では、当初コーポレート部門に配属されたメンバーがマーケティング部門へ異動し、現在では、お客様が最初に目にする販売サイトの運営を担う中心メンバーとして活躍しています。
私たちが見ているのは、その人がどこに所属しているかではありません。
その人らしさを活かしながら、最も大きな価値を発揮できる場所はどこかということです。
活躍している人に共通点がないと思うのも、それぞれが自分なりのやり方で価値を発揮しているからだと思います。

会社の事業について

──改めて、貴社の事業について教えてください。

大堀様:当社は、ECサイトを通じてオリジナルウェアやグッズを販売・製作する事業を展開しています。
主力サービスであるCLAT-JAPANでは、最短翌日出荷を標準とする「時間的自由」と、ノーデザインでも注文できる「デザインの自由」を強みとしています。
オリジナルウェアは納期やデザイン制作が大きなハードルになりやすい商品ですが、私たちはそうした制約によってお客様が集う機会を諦めてほしくないと考えています。
そのため、いつでも注文できること、誰でも注文できることを大切にしてきました。

──そうした強みはどのように実現されているのでしょうか。

大堀様:もちろん設備やシステムも重要です。
しかし、それだけで競争優位が生まれるわけではありません。
新しいサービスを考えるのは人ですし、お客様に最適な提案を考えるのも人です。
私たちは「時間的自由」や「デザインの自由」を提供していますが、その背景には常に人の判断があります。
だからこそ、人材育成は事業戦略と切り離せないものだと思っています。

──事業の成長を支えているのも人だということですね。

大堀様:はい。
当社は2020年から2025年にかけて、売上高約10億円から約37億円まで成長してきました。
その成長を支えているのは設備やシステムもさることながら、最終的にはフォーカスの理念を体現する「人」がいることです。
だからこそ私たちは、人材育成を事業戦略の一部として考えています。

プリント加工の作業風景

未来への取り組み・今後の展望

──最後に、未来に向けた取り組みや今後の展望をお聞かせください。

大堀様:現在は推し活領域など、CLAT-JAPANとは異なる文脈での新たな挑戦も進めています。
また、それらを海外に向けて展開できるよう、現在はオーストラリアでの販売事業も展開しています。
私たちは地方に本社を置く会社ですが、山梨から世界へ挑戦していきたいという想いがあります。
山梨で育った人が「いつか帰ってきたい」と思える会社であり、世界から山梨に人が集まる会社であり、そうして山梨県民が世界に誇れる会社でありたいと思っています。

──今後も積極的に採用を進めていくのでしょうか。

大堀様:採用は続けていきますが、人数を増やすこと自体が目的ではありません。
組織は大きくなればなるほど情報伝達コストが増えますし、それだけで価値が生まれるわけでもありません。
私たちが目指しているのは、より少ない人数でより大きな価値を生み出せる組織です。

──最後に、これからどのような会社を目指していきたいですか。

大堀様:私たちはただ会社を大きくしたいわけでも、ただ人を増やしたいわけでもありません。
お客様により大きな価値を届けたいと思っています。
山梨から世界へ挑戦しながら、多くの人に必要とされる会社であり続けるため、新しい挑戦を続け、より良い組織をつくっていきたいと思います。

製品を囲んで打ち合わせをする社員の皆様

✺ Interviewees

お話を伺った方

  • 大堀

    2013年 入社 2014年 販売企画部 部長職 就任 2015年 経営管理部 部長職 就任 2017年 営業本部 本部長職 就任 2017年 管理本部 本部長職 就任 2020年 役員就任

  • 澤中

    2023年 新卒1期生として入社 2024年 社長直属の特別事業部にて主任職 2025年 コーポレート部門に転属し主任職

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株式会社フォーカス

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