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コンピテンシーディクショナリーとは?評価基準を体系化する仕組みを解説
はじめに
評価者によって、コンピテンシー評価の基準にばらつきが出てしまう。ある上司は行動の積極性を高く評価し、別の上司は結果だけを見て判断する。こうしたばらつきの背景には、優れた成果を出す人の行動特性が、組織として言語化・共有されていないという問題があります。コンピテンシーディクショナリーは、こうした行動特性を体系立てて整理し、評価や育成の共通言語とするための仕組みです。本記事では、その内容と実務での活かし方を解説します。
コンピテンシーディクショナリーとは?
コンピテンシーディクショナリーとは、組織内で高い成果を上げる人材に共通して見られる行動特性、すなわちコンピテンシーを、職種や等級ごとに整理し一覧化した辞書のことを指します。1993年にライル・M・スペンサーとシグネ・M・スペンサーが提唱した研究がもとになっており、知識や資格など「何ができるか」を測る従来の能力評価とは異なり、実際の職務で「どのように行動するか」に着目する点が特徴です。似た言葉にコンピテンシーモデルがありますが、モデルが特定の職種・等級に求められる行動特性の組み合わせという個別の設計図を指すのに対し、ディクショナリーは組織全体で使う行動特性の項目を網羅的にまとめた、設計図をつくるための部品集という位置づけです。また、コンピテンシー評価が基準に沿って個人の行動を測定する評価活動そのものを指すのに対し、ディクショナリーはその基準のもとになる項目集を指す点で異なります。一般的な項目には、対人影響力、達成志向、チームワーク、分析的思考、リーダーシップなどがあり、行動レベルの高低を示す複数段階の定義が付されることが多く見られます。
コンピテンシーディクショナリーがよく使われるシーン
人事評価制度の設計段階で、評価項目や評価基準を検討する際の土台として使われます。等級ごとに求める行動水準を定義する場面や、昇格審査の判断基準を明確にする場面でも参照されます。採用面接では、自社で成果を上げている人材の行動特性を面接官が共通の基準として持てるよう、コンピテンシーディクショナリーをもとにした質問項目や評価シートが作られることがあります。研修設計の場面でも活用され、等級ごとに不足しているコンピテンシーを特定し、それを補う研修プログラムを組み立てる際の参照元となります。タレントマネジメントシステムを導入する企業では、システム上にディクショナリーの項目を登録し、評価や配置検討のデータとして活用する例も見られます。
コンピテンシーディクショナリーを理解することの重要性
この考え方を理解する意義は、評価や育成の判断基準を、個々の評価者の主観から、組織として共有された言語へと転換できる点にあります。何をもって「優秀」とするのかが言語化されていなければ、評価者ごとに異なる基準で評価が行われ、被評価者にとって納得感の低い制度になりかねません。ディクショナリーがあれば、評価者は共通の項目と行動レベルの定義に沿って判断でき、被評価者も何を伸ばせば評価が上がるのかを具体的に理解できます。一方で、導入には注意点もあります。他社のディクショナリーをそのまま流用すると、自社の事業や文化にそぐわない項目が並び、現場で使われない形骸化した基準になりがちです。自社で成果を上げている人材の行動を分析し、自社に合った項目を抽出する過程が欠かせません。また、項目数が多すぎると評価者の負担が増し運用が形骸化するため、職種や等級ごとに項目を絞り込む工夫も必要です。事業環境の変化とともに求められる行動特性も変わるため、一度作成して終わりにせず、定期的な見直しが求められます。